☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


49この想いの行方11




翌日。
駅に高村の姿はなく、正直がっかりした気持ちで学校へ向かう。
昨日確かに「また明日」って言ってくれたのに。
あいつを見かけたら、「おはよう」って声をかけようと決めていたけれど、その意気込みは一瞬でしぼんでしまう。
当の本人がいないんだから仕方ないってわかってるけれど、
でもやっぱりあいつはとても学校どころじゃないのかもしれない。
オレの推測が当たっているなら、それは当然のことだ。






昨夜、帰宅してからもいろいろと考えていた。
これまでの出来事を一つ一つ思い返してみても、やっぱり、オレの推測を打ち消す材料の方がずっと少ない。
例えば野々宮なら何か知ってるんじゃないだろうか。
黒縁メガネの情報はとっくに把握していた野々宮は、そいつが高村を連れ帰るのを許している。
それに終業式の日、高村の早退を促したのは野々宮だし、その後の欠席の理由も知っていて当然の立場だ。
だけど、野々宮に聞くのは違う気がした。

だけどもうこの時のオレには、高村の事情なんてどうでも良くなってた。
あいつの周りに誰がいて誰がいなくなったとしても、オレには関係ない。
オレの中ではっきりした想い。
オレは高村の傍にいたい。
そのためにオレに出来ることは、まずは高村との関係を修復することだ。
これまでにオレがしてきたことをあいつに許されるまで謝ろう。
傍にいることを許されるまで、どんな償いでもしよう。


特進に上がる前、野々宮に求められた「目標」が今、はっきりと定まった。
どんなことがあいつの身に起こっても、それを支えられる、力になれる人間になる。





駅にはいなかったはずの高村が、教室に現れて驚いたのはオレだけじゃない。
突然早退したまま何日も不在だったあいつを、クラスの女子たちが取り囲む。
そういうのに相変わらず慣れていない高村はちょっと戸惑うような、はにかんだ笑顔で応えている。

すぐそばで水島とナルも笑顔でその様子を見つめている。
オレはといえば、ほんのちょっと放心していた。

高村が教室に入ってきてすぐ目が合った。
笑顔になるわけでもなければ、強張るでもない。
けれど確かにオレの視線を捕えた高村の眼元は柔らかくて。
そしてその柔らかさのまま、視線が逸れた。
ただそれだけのことだったけれど。
それは以前の、まだ高村と出会って間がないころの視線の合い方と同じで。
高村にとってオレが何者でもなく、ただのクラスメートであった頃。
好奇も好意も、もちろん悪意も、何一つオレに余計な感情を持ち合わせずに向き合ってくれた唯一の女の子。
その子が今、またオレの前に現れた。
言葉にできない何かがオレの中に満たされていく。

「サッカー。講義始まるよ?プリント出さないと」
水島に声をかけられてようやく我に返った。



夏期講習はプリントが主な教材。
予習してこないととてもじゃないが授業にならない。
高村は一日あたふたしていて、そんな姿も今のオレには何もかもがただひどく可愛らしく映る。
これまでずっと高村を見る度渦巻いていたいろんな感情が不思議なくらいに消えていた。
後悔や自己嫌悪、焦り、怒り・・・・そういう汚い感情が濾されて、最初に抱いた「好き」の感情だけがそこにあるような、そんな感じだ。
ずっと、とっくの昔に忘れてしまった純粋なこの感情は、とんでもなく照れくさくて恥ずかしくて、なにより今のオレには似合わないくらいにきれいなもので、持て余すほどの大きさで。
でもそれはオレの中の高村の存在そのもの。
なににも代えがたい、大切な存在。

そのことを改めて実感したオレは、講義が終わった後すぐに姿を消した高村を探していた。
図書室に向かうあいつを見つけて呼び止めると、驚いた様子で振り返った高村はちょっと前までの強張った反応とは違ってちゃんとオレを見てくれた。
それだけのことに、心臓がバクバクと音を立てる。
痛いくらいだ。
そして、なんというか、高村をまともに見るのがすごく照れくさくもなる。
なんだよ、これ。

「・・・自転車の、鍵」
「あ!!ごめん!!」
高村は、オレが電車に乗り遅れたことをしきりに謝ってくる。
そんなところはやっぱり全然変わってない。
「残って、勉強か?」
「うん。休んでた分のもやっておきたいし」
「そっか。・・・頑張れよ」
「うん、ありがと」
本音を言えば、オレも残って勉強したかった。
だけど、昨日の今日すぎる。
焦ってまた高村の警戒心を煽りたくはなかった。
それになりより、ちょっと今のオレ、なんか変だ。
大した話もしてないのに、緊張してて、なに話していいかわからなくなってる。
オレに笑顔を見せてくれてる高村がいるってだけで、どうしようもなく気持ちがふわふわしてしまってる。
それを抑えようとして余計に言葉が見つからない。
「じゃあ、また明日ね」
屈託なく笑う高村の言葉に、オレは頷いて踵を返す。

大丈夫。
高村のくれる言葉を信じていれば、それでいいんだ。





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