☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


45この想いの行方7



振り返った高村の様相は、号泣という言葉がふさわしかった。
泣き腫らした目。
涙でぬれた頬。
鼻は真っ赤っかだ。

あいつが泣くなんて。
こんな人目につくところで、あの意地っ張りが。
オレは完全に頭に血が昇っていた。



高村をかばうように黒縁メガネの前に立ち、睨みつける。
背丈には自信はあるけど、それよりもメガネ野郎の方が更に高い。
それが余計に癪だった。
「あんたこの間からなんなんだよ!!付きまといかっ!?」
怒鳴るオレを、黒縁メガネは珍しいものでも見るような目でまじまじと見つめてくる。
一方で、背後から高村がシャツを引く。
「サッカーくん、違うの。この人、そんなに変な人じゃないからっ」
泣き腫らした顔でそんなことを言われてもちっとも説得力なんてない。
けれど恐る恐るではあるけれど、オレを見上げる姿は、正直、可愛い。
こんな時なのに、ちょっとだけ胸が高鳴る。



フッ。
小さな笑い声が確かに聞こえた。
「おいおい、全然フォローになってないぞ、稜ちゃん」
楽しげな笑顔を浮かべ、黒縁メガネは肩をすくめる。
大げさなその動きも気に入らない。
余裕たっぷりなのも気に入らない。
高村を泣かしておきながら、なんだよ、こいつ。
もう一度高村を振り返る。
困ったように眉を下げながら、高村は小さな声で
「ほんとに・・・・・・・・・・・・・・・、友達」
と、妙な間をあけて答える。
だけど嘘を言ってるような様子はない。

友達?
友達だって?
こんな奴が??

「お互い異性としてはマジ勘弁、って思ってる。そういう仲だよ俺たちは」
黒縁メガネの言葉に高村は必死に頷き返す。

だったらなんで高村はこんなに泣いてんだ。
お前が高村になにかしたからじゃないのかよ?
全然納得していないオレの様子を見て取った黒縁メガネはまた肩をすくめながら手のひらを広げてみせる。
いちいち、ほんっとに、カチンとくる。
なんというか、わざとこっちが苛立つようにやってるような気がするから、余計に。

「やれやれ。最近いつもこんな役回りじゃん。どうなの。これ」
黒縁メガネは笑顔を浮かべたまま、オレを見る。
その目はちっとも笑ってない。
笑ってもいない目をにっこりと三日月形にする。
「キミさ、サッカーくん?その子、送ってあげてよ。そんな恰好で自転車乗るらしいから」

「は?」

思考回路が一瞬、フリーズする。

なんでオレの名前をこいつが知ってるんだ?

それが7割。
残りの3割は、高村の姿。

改めて高村の姿を上から下までまじまじと見る。
膝上丈の黒いワンピースはよく似合ってる。
ショートカットの高村にそれはすごくよく似合ってる。
大人びて見えて、なんかすっごく照れちまいそうなくらい。

・・・・そうじゃなくて。

短い丈のスカートなんて別に珍しくない。
だけどこんなんで自転車なんか漕いだらとんでもないことにならないか?

オレのもの言いたげな視線に気が付いて、高村はわずかに口をとがらせる。
くっ・・・・・それ、可愛すぎ。
なんだよ、高村、なんかすげー可愛さ増してないか。

・・・・・・・・。

「「じゃなくて!!」」
我に返って声を荒げるオレと、ムキになった高村は同時に黒縁メガネを振り返る。
けれどそこにはあの男の姿はなく、車のエンジン音が上がった。
黒縁メガネは助手席の窓を開けると、涼しい顔で手を上げる。
「じゃあね、稜ちゃん。またいつか会おう。家庭教師ならいつでも言ってきて」
そうとだけ言うと黒縁メガネはとっとと車を走らせロータリーから去って行った。

唖然としているのは、オレだけじゃなかった。
車が走り去った方向を見つめたままの高村の小さな背中はかすかに震えているように見えたのは気のせいだろうか。

黒縁メガネのことは全く不愉快だし、結局何者なのかもわからない。
だけど、今、目の前に高村がいるのは事実で、それがすべてだ。
どういう魂胆なのかは分からないが、あの男はオレに高村を送れと言った。
だったら、いっそ便乗してしまえ。

「・・・・自転車、どこ」

努めて冷静に高村の背に声をかけると、彼女は恐る恐る振り返った。
「え・・・・・あ。や、気にしないでっ。帰れるし、その、沢井さん、からかっただけだからっ」
沢井というのがあの男の名前らしい。
どーでもいいけど。
「あの人、あーゆー人だからっ、サッカーくん気にしないで!!ごめんねっ」

【あの人】

良いも悪いもひっくるめた親しい間柄を感じずにはいられない呼び方に引っ掛かりを覚えながらオレは高村を見つめる。
「・・・いいから。自転車の場所とカギ。早くしろよ」
「は、はい・・・っ・・・」
駐輪場に向かって歩きだすオレの後ろを高村が慌てた様子で追いかけてくる。

あいつの自転車の鍵を受け取り、サドルの高さを変えてる間、
高村はなぜかオレとの距離を取って立っている。
本当はオレなんかに送ってもらいたくなんてないの、わかってるさ。
けど、オレもひけない。
今を逃したら、多分、もう二度と高村とは話せなくなる。
何故かそんな気がして仕方なかった。
胸騒ぎがして仕方ないんだ。
今こいつを一人にしたらいけないって。
涙は引っ込んだようだけど、それでも真っ赤な目は痛々しいし、ぐずぐずと鼻を鳴らす高村。
これは異常事態。非常事態。
こいつが人の前で弱さをさらすことなんて。

だけど高村は自転車に乗るのを渋る。
往生際が悪いのは変わらない。
今どんだけ酷い顔してるかわかってんのかよ。
そんな顔、誰かに見せたくなんてない。
「早くしろよ。こんなとこ誰かに見られて困るのはおまえだろ」
そんな言い方しかできない自分が嫌になる。
それでも高村には効果があったのか、ようやく諦めて荷台に座った。
荷台にまたがろうとしてオレに睨まれて、慌てて横座りになったのは、もう、こいつの愛嬌だと思うことにする。
どこを掴んでいいかわからず狼狽えている高村の手をひっつかんでオレの腰に回すと、やっぱりなんか動揺してる。
なんかもう全部、昔とちっとも変わんない高村がこんなに近くにいるなんて。
「両手でしっかりつかんでろ。ンで、口閉じてろよ、舌噛むぞ」
動揺してんのはオレも一緒だ。
なんなんだろうな、今日は。
一気にペダルを踏み込んで走り出す。


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