☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


44この想いの行方6



終業式の間、オレはほんの少し前にいる高村の後ろ姿を見つめていた。
高村はこんなにも退屈な時間でさえまっすぐ前を見ていて、
時々その長い髪がわずかに揺れる程度で、とにかくじっとしている。
やっぱりすっごくまじめ。
変わんない、ちっとも。


期末テストの最終日、オレが立ち去った後のことはちょっとだけ噂になっていた。
高村が、というんじゃなく、特進の女の子が、って形で。




【真面目な特進女子が教師の制止を振り切って、彼氏の車で帰った】

本当のところは、渋々ながらも野々宮の許可をきちんと得て車で帰ったそうだから、
どこであろうと噂なんてものは面白おかしく装飾されるもんなんだな、と飽きれるしかなかった。
要するに高村の彼氏というのは、野々宮がたとえ渋々とは言えども、安心して高村を託せる相手だったということなんだろう。
つまりはそういうことだ。

小さなため息をつく。

【高村と友達に戻る】

それはひどく難しいことだと、やっぱり思うんだ。
あいつは、良くも悪くも誤魔化すとか取り繕うとか、そんなこと絶対できないやつだから
オレの存在を無視し続けている今の状況を考えたら、話しかけたりしたら、本気でいやな顔をされてしまうんじゃないだろうか。
わかってるつもりだけど、やっぱりはっきりと決定打を食らってしまったらオレは一生立ち直れないと思う。
怖いんだ。
何もしなくたって後悔の山積みでしかないってわかっていても、怖いもんはどうしたって怖い。
そもそも、いまさら何を話したらいいんだろう。
元々、話しかけるってのは苦手だ。
最初のきっかけってどうしたらいいんだろう。

高村の背中を見つめながら考え込むオレの背中にドンっと軽い衝撃があった。
「おっと、悪い」
言いながらも生徒の列を割りながら前へ進む野々宮は、高村の肩を掴んだ。
「ちょっと来い」
そう言ったが早いか、高村の腕を取ると来た道を急いで戻っていく。
真顔の野々宮と、戸惑い気味の高村が横を通り過ぎた。
振り返ると、二人が講堂を出て行くのが見えた。
一部の生徒がざわついた程度で、あっけなく静まり返る。

終業式が終わって教室に戻ったオレは、高村の席がすでに綺麗に片付けられているのに気付いた。
高村、帰ったんだ。
どうして?
他のクラスメートたちも同じらしく、あちこちで顔を見合わせている。
野々宮からは、家の事情で早退したという短い説明があっただけだった。
けれどHRのあと、北川が野々宮に呼ばれて、廊下で何か話していた。
北川はそのあとすぐに教室を去って行ったので、どんなやり取りがあったのかはわからなかった。

こんな状況で始まった夏休み。
同時に、正規の授業とさほど変わりない夏期講習が始まった。
けれど高村の席は空いたまま数日が過ぎた。

北川は自分のとは別にノートを作っているようで、つまり高村の休みは野々宮も承知しているということなんだろう。
一日の講義が終わった後も席に残ってノートづくりをしている北川に、オレは意を決して声をかけてみた。

「北川」
「はい?」
机から顔を上げた北川は、俺を見てちょっとだけ意外そうな顔をしたもののすぐにほほ笑みを浮かべた。
たしか野球部のマネージャーとかで、野々宮とも親しいらしい。
おっとりした雰囲気があって、高村と一番親しい友人だと、オレは認識していた。
「それ、高村に?」
北川の手元に視線を向けると、彼女は、軽く頷いた。
「あんまり休むと大変だからね」
「あいつ、なんで休んでんの」
オレの問いに北川はほんの少しだけ不思議そうに首を傾げて、持っていたシャーペンをノートの上に置くと改まったようにオレの方に体を向けた。
「気になる?」
それは、からかいとか、好奇心とか、そういう響きは全くなくて。
だからオレは素直に頷いた。
「・・・・・こんなに休むの、珍しいだろ」
「うーん・・・・そうだね。二年生になってからは初めてかも」
今度はオレが首を傾げた。
「稜ちゃん、一年の時は欠席多かったんだよ」
知らなかった。
「このところ、すごく元気そうだったから、心配だよね」
「理由は、知らないのか?」
北川は首を横に振る。その表情が曇る。
「家の事情、って言ってたよね。あまり、いいことじゃないんだと思う。
早く、元気になって戻ってくるといいね」
北川は本気で高村を心配していて、だからオレも頷き返し、それから北川に礼を言うと教室を出た。


家の事情。

そう言われて思い浮かぶのは、やっぱりどうしても身内の不幸のような出来事。
だけど高村の家族にそんなことがあったら、いくらなんでもオレのところにだって少しくらいの情報は入ってくる。
一応地元だし、そういう話にはきっとみんな敏感だから。
だけどそんな話は全く入ってこない。
親戚とかかもしれないな。
だったら、明日か明後日には学校に戻ってくるんじゃないだろうか。
オレはそんな風に考えていた。

けれど翌日も高村の姿はなかった。
落胆した思いで一日を過ごし、最寄り駅の改札を抜ける。

その途端、あっ、と思った。

駅のロータリーに見覚えのある車が停まっている。
その横に例の黒縁メガネの男が底意地の悪い笑みを浮かべて立っている。
そしてそいつと向かい合いで立っているのは・・・・・、
「高村っ!!」
何か考えるよりも先にオレはあいつを呼んでいた。
びっくりするように振り返った高村は泣いていた。
泣きはらした真っ赤な目と目が合った瞬間、オレは飛び出していた。


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