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「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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42この想いの行方4


初夏。
期末テストの対策が始まる前に、弓道部を辞めた。
未練はなかった。
今のオレにはとにかく時間が必要だった。
勉強する時間が。

高村との差を卒業までに埋めてやる。
それがオレの目標になった。
決めてしまえば、あとはただひたすら机に向かうだけだ。
学校が終われば家に直帰し、勉強をする。
それがオレの日常になり始めていた。



これまでにない勉強量で臨んだ期末テストは、これまでにない手ごたえがあった。
来週にならなければ結果はわからないけれど、それでもすべての教科で自己ベストの点数を取れる自信があった。
こういう感覚自体、本当に久しぶりのことで、柄にもなく達成感を感じている自分がいた。
夏休みのほとんどは夏期講習で埋まっている。
それに二年三年は全員参加が義務の学習合宿。
休みはお盆くらいしかない。
今のオレにはありがたいくらいの過密スケジュール。
「ホント、サッカー変わったよな。まじで夏期講習全部受けんの?すげーな、夏休みねーじゃん」
「学習合宿すら行きたくねーってのに。勉強なんてさ全然楽しくねーじゃん?今あそばねーでいつ遊ぶんだよ」
仲間たちの言葉にオレは曖昧に笑って返すだけだ。
こいつらとも、この頃はせいぜい登下校で会うくらいになっている。
悪い奴らじゃないし、一緒にいて楽しいこともある。
だけど、少しずつ、ずれていくのはわかっていた。

この日は期末テスト最終日。
それと必ずセットで行われるのが下校指導。
校門から、ボタン式信号機のある横断歩道までの細く長い下り坂は、一斉下校の生徒たちでごった返していた。
信号の代わりは遅く、青信号の時間は極端に短い。
そこで待機している教師たちが、制服や持ち物のチェックをしているものだから、ちっとも進みやしない。
テストが終わった解放感と、初夏のほんの少し汗ばむ気候のせいで、緊張感のかけらもないこの時間。
「学習合宿って言ってもほとんど自習なんだろ?俺マンガ持ってこっかな」
「お、いいねえ」
連れたちの会話もあまり頭に入ってこないのは、ほんの少し前に高村の姿を見つけたせいだ。
北川と並んで楽しそうに話をしながら歩く高村。
このひと月、高村はますます綺麗になった。
大人っぽくなった、とでもいうのだろうか。
あいつの恋がうまくいっている確かな証。
誰かのものになってしまった高村を想うたび、今も胸が灼けるほど苦しい。
けれど綺麗になっていく高村にどうしてもまた見惚れてしまう。
そんな自分に呆れて、ため息と共に遠くに視線を向ける。

「あっ」
思わず声を上げてしまった。
「え?なに?」
「どうした?」
仲間たちの視線が一斉にオレに向き、慌てて首を横に振る。
「や、何でもないんだ」
なんだよー、とか言いながらまた元の話題に戻っていく仲間たちの隣でオレはもう一度視線を前に向ける。
横断歩道よりけっこう手前の路肩に車が停まっている。
いつからそこにいたのかわからないけれど、その車には見覚えがあった。
あの冬の日、高村を待っていたあの人の車に間違いなかった。

ここからは乗っている人物は確認できない。
前を歩く高村も全く気が付いていないようだ。

気づかないでくれ。

そんなことを思う自分がいた。

必死に高村の様子を追ううちに、あいつとの距離はどんどん縮まっていく。
交差点も近づいてくる。


「大事にしてもらってる?」
ふいに、北川の声が耳に飛び込んでくる。
真っ赤になりながら、うんと頷く高村の横顔は、今まで見てきたどんな笑顔よりも輝いて見えて愕然とする。
けれど次の瞬間、高村が視界から消えた。
はっと我に返ったオレは、自分の足元近くに鞄が落ちているのに気が付いた。
それに手を伸ばそうとする高村の姿もある。

とっさにオレも手を伸ばす。
鞄を掴みかけた高村の手に、オレの手が重なる形で鞄を拾い上げる。
それと同時に高村の手は鞄から離れた。
こんなの、一瞬の出来事だ。
高村にとっては取るにならない程度の、接点。
触れた自覚すらないに違いない、その程度の、些細な出来事。

以前あいつと廊下でぶつかったときにはひどく驚かれて困惑されたけれど、
今のあいつにはその感情すら湧き上がる間もないようだった。
オレを見上げた瞳はまださっきの熱をはらんでいて、こっちの心臓は跳ね上がっているというのに。
口いっぱいに苦い味が広がる。

拾い上げた鞄をあいつに押し当てるように渡すと、すでにいくらか先に進んでいる仲間たちの元に合流する。

それでも、横断歩道を渡るときに車の方をちらりと見てしまう。
ここからならはっきりと運転席が見て取れた。
「っ!?」
黒縁メガネの男と目が合った。
何かを探るように目を細めて、けれどそれは間違いなくオレを見ているようだった。
慌てて視線を逸らして逃げるようにその場を離れた。

いったい
なんなんだよ。

もう振り返ることはなかった。
振り返る勇気は、オレにはなかった。
きっと今頃、高村は気が付くだろう。
あの車に。
あの男に。

そしてあの笑顔を、あの男に向けるんだ。


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