☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


38遠い存在10

野々宮にはああ言ったものの、高村の件でオレができることなんて実際あるわけもなく、
ただ遠目に高村を見るのが関の山。これまでと何一つ変わらない。
とにかく。
あれから高村は、特に変わったところはない。
相変わらず、あいつは淡々とした様子で日々を過ごしている。
けれど季節が進むにつれ、あいつの表情に時々影が差すようになった。
その理由はオレにはわからない。
家のことかもしれないし、彼のことかもしれない。
今のオレにそれを知るすべはない。


不本意な形で参加することになったスポ体でオレたちバレーチームは準優勝を果たした。
声援を送るクラスメートの中に高村がいて、笑ってるのを見てほっとする。
あいつが毎日、そういう顔で過ごせたらどんなにいいだろう。
程良い疲労感の中、吊革に体重をかけてぼんやりとそんなことを考えていると、後ろから勢いよく肩を叩かれた。
「よ!なんだよ、眠たそうな顔してっ」
明るく話しかけてきたのは竹内だった。
いつか偶然出会って以来。
「お前んち何度電話しても誰も出ねえしさ、会えてラッキー!」
竹内は上機嫌で「明日、中学のサッカー部仲間数人と遊ぶ約束あんだよね~」とか言いながらオレの隣に並ぶ。
「お前も来いよ。◇◇駅前にできた遊び場あんじゃん?」
入場料だけで施設内のアミューズメントを楽しめるらしく、学校でも結構話題になっているところだ。
「んなとこ、疲れるだけじゃん」
「お前な、なにじじくさいこと言ってんだよ!若者は元気に遊ばないとだろっ?体動かそうぜ!!」
竹内の勢いが良すぎて、周りの乗客の中からくすくすと笑い声が起こる。
ちょーハズいんだけど。
「明日8時駅前集合だからなっ。遅れんなよっ」
言いたいことだけ言うと竹内は慌ただしく停車した駅に降りて行った。
8時?
随分早いじゃないか。
竹内の連絡先なんて知らねえし断りようがない。
「くそ、はめられた」

翌朝、約束の時間に駅に着いたオレをすでに竹内たちが待っていた。
正直なところ、気のりしたわけじゃなかったけど、竹内と思われる着信がここ数日何度か入ってたのを見てしまったら、なんだか申し訳ない気がした。人数合わせに誘われたとしても、このままスルーするのは気が引けた。
卒業以来の仲間が三人。
少しも変わっていない。
「はい、揃ったー。切符買っといたし、さっさと行こうぜ、ほら電車来た」
オレが来なかったら無駄になっただろう切符を竹内に渡される。
根っからの良いやつなのは変わらない。
「そーいやさ、お前と仲良かった子いたじゃん?なんて言ったっけ?多分同じ電車乗ってる」
「?」
誰か見当もつかないオレは首をひねる。
「確か荒井にいじめられてた子だろ?ちょっと騒ぎになったことあったじゃん」
「ええっ?俺はてっきり荒井とデキてると思ってたんだけど?なにそれ?」
「違うよなサッカー。お前が助けてやったんだよなぁ?
学校二人でサボってデートしてたの、うちのばーちゃんが見たって言ってたぞ」
「え、マジかよ!!なんだよサッカー、そうなのか?」
「違う違う。なんかいろいろ違ってるから」
オレは苦笑しながら首を横に振る。
噂話の切り貼りの結果とはいえ、面白いことになってるもんだ。
だけど笑えない部分もあってそこは気になるけれど、最初の竹内の言葉通りなら今話題に上がっているのは間違いなく高村だ。
同じ電車にあいつが乗ってるのか。
思わず車両の中を見回したオレに竹内が言う。
「サッカーが来るちょっと前に○○○駅までの回数券買ってるの見たよ。習い事でもしてんのかな」
一時間ほどかかる○○○駅までの回数券。
高校生が気楽に買える額じゃない。

オレたちが降りた◇◇駅に当然ながら高村の姿はない。
駅前の駐車場に視線を巡らせたけれど、高村が乗っていたという車も当然見当たらない。
やっぱり今日はバイトに向かったわけじゃないらしい。
あいつが誰に会いに行ったかなんて、考えたくもない。


誘われるままに向かったアミューズメント施設は、結果として行って良かったんだろう。
余計なことを考える間がないくらい、体を目いっぱい動かしてくたくたになるまで遊びまわった。
高校でも何らかの運動部に所属してるこいつらと同レベルで運動するのは正直きつかったけど、ばてそうになるたびに竹内に煽ってくるもんだからムキになっていたところもある。
遊んでいる最中にも、竹内たちは高村のことを聞き出そうとするもんだから、それをごまかすのにこっちも必死になってもいた。
「体、いてぇ・・・・」
思わず出た弱音にみんなが笑った。
「運動不足だな、サッカー。最強FWの名が泣くぞ?」
「誰の話だよ」
「オレらン中じゃお前と荒井が頭一つ抜き出て上手かったじゃん。他のスポーツでもなんでも続けたら良かったのに」
「一応オレ、弓道部だからな?」
「「「似合わねー――――っ!!」」」
「うるせぇっ、ハモんなっ」
怒りながら笑えてしまう。なんだよこいつら。すげー懐かしくなる。
昔はこんなやり取り、毎日のことだった。


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