☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


36遠い存在8

野々宮は改めて座り直すと口を開いた。
「うちの学生が遊園地でバイトしてるっていう通報があったんだ。生徒名まではつかめていないが近いうちに生活指導部が動くことになる」
野々宮の話に思わず体に力が入る。

高村がバイトをしているという話を初めて耳にしたのは中3の今頃の季節。
同じころに高村が駅のホームで大学生くらいの男と楽しそうに話し込んでいるのを見かけたけれど、その相手はきっとバイト先の人だろう。高村がとても楽しそうに笑っていたから。兄の高村さんに繋がる人なら多分高村はあんな風に笑ったりしない。そう思う。それにその人はいたって普通の人だった。
それにあの年の冬の朝。
駅前で高村を待っていたのもその人だった。
あの時高村は泣いていて、その人はとても暖かくて優しい眼差しで高村を見つめていた。
二人がどんな関係かなんて、考えなくたって分かる。
高村はあの人のことを・・・・・・・。


だからもし今もバイトを続けているとしても、おかしくはない。
あいつがバイトを始めた理由は知らないけれど、今はきっとあの人と一緒にいる為だろう。
けれど。
オレが知ってる限り、高村のバイト先は遊園地じゃなく別のテーマパークだったはずだ。
屋外型博物館のようなそこは、地元の小学校が社会科見学に来るくらいで、客層はほとんどがよその土地から来る『観光客』だ。地元の家族連れや若者が頻繁に来る遊園地と違って、あそこならバイトをしていてもばれにくい。
上手いところを見つけたもんだって言ってたやつもいたくらいだ。
高村は賢い。
簡単にばれるようなところでバイトなんかしたりしないはずだ。
それでも完全にばれない訳じゃない。
即停学のリスクを背負ってでも、高村はあの人の傍にいたいんだと思うと胸が灼けるようだ。

ん?
野々宮は「生徒名までは掴めていない」と言ったよな?
「なんで、それが高村だって話になんだよ」
一番大事なところじゃないか。
「高村は真面目にやってんのに疑うのかよ?あいつのこと、信用してねえのかよ」
「・・・・・高村に関して、もう一つ気になる報告が上がってる」
高村さんのことが頭をよぎる。
あいつはいつだって真面目で、いいやつで。
だけどいつもいつも、「兄貴が不良」ってだけで色眼鏡で見られ続けて。
地元から離れたこんなド田舎の高校に来て、ようやくそんな視線から解放されたっていうのに。
けれど野々宮は全く違うことを口にした。
「◇◇駅で大学生風の男の車に乗ってる姿を頻繁に目撃されている」

◇◇駅はオレたちの暮らす町の駅から三つほど先の駅で、遊園地やテーマパークへの送迎バスが出ている比較的大きな駅だ。高村が今もバイトしているなら見かけたやつがいてもおかしくはない。
けれど「高村はバイトをしていない」を前提に話を進めている以上、慎重にならなきゃいけない。
バイトの話と、大学生との目撃情報は、別のものだ。
間違えるなよ、オレ。
自分に言い聞かせる。
「それが高村だって確信あんの?つか、もしそれが高村だったとしても問題あんの?バイトのことと全然関係ない話じゃん」
年上の彼氏とデートなら、車に乗ってたっておかしくない。
学区外で会ってることだって、別に何一つおかしくなんてない。
自分の気持ちはひどく沈んでいくばかりだけど今は、とにかくそんなことに構っていられない。
高村を守らなきゃ。
「お前も高村と同じようなことを言うんだな」
野々宮は苦いものを噛んだような顔をする。
オレはオレで拍子抜けする。
「は?聞いたのかよ、本人に」
「一応バイトの件と共に確認はした。バイトはしてない、会ってた相手は友人だと」
「・・・・問題解決じゃん」
友人、と言うのは疑わしい。
だけど高村がそう言ってるのなら二人はまだそういう関係じゃないってことか?
わずかに気持ちが上を向く。自分が対象外だとわかっていてもやっぱりホッとする。

だけど野々宮は小さくため息をつき首を小さく横に振る。
「お前ら危機感薄いんだよ。年頃の女子だぞ?軽々しい行為だとは思わないのか?」

つい最近、隣の商業高校の女子が大学生とトラブルになった事件があった。
ニュース的に言えば、未成年相手の婦女暴行事件。
でもあれは女子高生側にも結構な落ち度があったのも事実で、そしてこんな話は大人たちが知らないだけでよくあること。
だけど大人の耳に入ってしまった今回のことは商業高側は当然大騒ぎになり、それはうちの学校でも同じで、全校集会が開かれ規律のある生活態度云々、不純異性交遊云々、時代錯誤な価値観を押し付けられるはめになった。

野々宮がそういう事案を想定して高村を心配しているのは当然だろう。
でも高村はゲーム感覚で恋愛するような連中とは違う。
あいつは不器用なくらい、人づきあいに対して慎重なやつだ。

それになにより高村に限ってそんなくだらない男につかまるとは思えない。
「随分信用してんだな、口もきいたことがないわりに」
野々宮はいつものニヤニヤした笑いを浮かべてオレを見下ろしている。
「・・・・・・・・あいつがまじめなのは、みんな知ってることだろ」
「だから、心配なんだよ。その目撃情報、あまりいい話じゃなくてな」

関連記事
スポンサーサイト

<< 37遠い存在9  TopPage  35遠い存在7 >>

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

トラックバック

トラックバックURL
http://lovesweetsweetberry.blog54.fc2.com/tb.php/497-8d136f68




Copyright ©☆きらきら☆. Powered by FC2 Blog. Template by eriraha.

FC2Ad