☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


26もどかしさの行きつく先9



高村と二人で居残り勉強をしている最中、松山が教室にやってきた。
「あ、やっぱここにいたのか。探したぞ。お前ら、進路希望のアンケート提出してないだろ?今日締め切りだって」
「「あ」」
すっかり忘れてた。慌てて鞄から取り出し松山に渡す。
だけど高村はまだ何も書いていないそれを困った様子で机に置く。
「んだよ、こんなもん適当適当」
松山は高村の筆箱からボールペンを取り出す。
「あっ!?なにすんのっ?」
高村は慌てて阻止しようと手を伸ばしたけれど松山の方が早かった。
志望校の欄には「K高校」と書かれていた。



「はい、これでOK」
「ちょっと!うそでしょ?」
唖然とする高村を尻目に松山は笑ってオレのそれと掴んでひらひらさせた。
「迷ってんならこれくらい書いとけって」
「いやいやいや、ふざけすぎでしょ!!!」
「「そんなことないだろ」」
オレと松山がハモると、高村は毒気を抜かれたような顔になる。
「・・・・・めちゃくちゃだよ」
「たまにはそういうのもいんじゃね?じゃ、責任もって出しとくから」
松山が出て行ってしまうと高村は頭がイタイと言わんばかりに盛大なため息をついた。
「高村ならK高、行けると思う」
「行けるとか行けないとかじゃなくてさ・・・・・」
高村は沈んだ顔でつぶやく。
「・・・・・・なんで学校なんていかなきゃいけないんだろ・・・・・・・」
そのつぶやきに込められた高村の想いをオレはこの時ちっとも受け止めようとしなかった。
ただ自分の中にある思いだけを口にした。
「オレもK高志望なんだ」
「・・・・・・そうなんだ」
「あっこなら近いしさ、うちからも結構進学するから知ってる顔も多くて気楽じゃん。高村も一緒ならオレすっげー嬉しい」
高村は何も答えなかった。ただ小さく笑っていただけで。
オレは高村の気持ちを見失ってることに少しも気が付けなかった。
ただただ高村が好きだって気持ちと、高村と一緒にいたいって願いだけしかなかった。
その感情が「焦り」に支配されてることにずっと気づけないままだった。

高村への思いが募るばかりで迎えたオレの誕生日。
約束通り高村は待ち合わせの場所でオレと二人っきりで過ごしてくれた。
教室で話すこともほとんどなくなっていたから、ちゃんとそこに高村がいたことが嬉しくてたまらなかった。
そこでの会話は、時間が戻ったのかと思うくらいに楽しくて。
オレのために作ってきてくれたお菓子に、オレが好きなCD。
一緒にそれを聴きながらオレはとても満たされた気持ちになっていた。
だけど、その隣で高村は沈んだ顔をしているのを見た瞬間、オレの中で何かが崩れた気がした。
高村を繋ぎ止めたい一心で、一方的にキスをした。
高村はオレを拒みはしなかった。
だけどキスのあとの高村は今にも泣きだしそうな顔をしていて、人の来る気配に怯えた。
差し出したオレの手も、もう高村はとってはくれなかった。
高村にとってオレは一緒にいたいどころか、一緒にいるところを見られたくない存在でしかなかった。
そのことに気が付いた途端、虚しくなった。

それからのオレは、何もかもがつまらなくなっていった。
家も学校も。
何もかもが嫌になった。

その年、最後に高村に会ったのは冬休みに入ったころ。
学校も休みがちで、期末テストもまともに受けなかったオレに高村が会いに来ようとしてくれていた。
慣れない余所行きのバスを探していた高村は、オレを見た途端悲しそうな顔をした。
「・・・・・学校、行こう・・・・?」

オレはただ高村に、オレに会いたかったと言ってほしかったのに。
だけど高村はそんな言葉をくれはしない。
ただ友達として心配してるだけ。
そんなものは【特別】でも何でもない。
友達付き合いの少ない高村にとって【特別】だっただけ。
そんな勘違いにオレはずっと乗せられてただけ。


「・・・・・もう、オレに構うな」


背を向けたオレを高村は追ってはこなかった。
このころのオレは、どうしようもなく腐っていた。
高村がどんな思いでオレに会いに行こうとしてくれてたのか、どんな思いで学校に行こうと口にしたのか、
なんて少しも分かろうとしない大馬鹿野郎だった。
追いかけてほしいと心のどこかで願っていながら、それが叶わないと知ると高村を憎んだ。
あんな女、サイテ―だ。
心の中で高村を罵って、うまくいかないこと全部を高村のせいにし続けた。

学校をさぼって、すさんだ生活を送って、薄っぺらな人間関係に身を置いて。
平気でうそをつくようになった。
好きでも何でもない女と遊んだ。
なにもかもどうでも良かった。
どうせオレが欲しいものなんて何一つ手に入らないんだから。
だったら努力とか我慢とか、そんなもんする意味なんてこれっぽっちもないだろ?


オレのことを掛け値なしに見てくれた唯一の人だった高村のことを。
オレの心を何度も救ってくれた高村のことを。
オレはずっと裏切り続けた。

オレは、どうしようもなく最低の人間に成り下がっていた。




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