☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


25もどかしさの行きつく先8

二学期も半分が過ぎ、季節は秋になっていた。
中間テストが終わると恒例の席替えが行われ、とうとう高村と離れてしまった。
高村はオレと席が離れたとわかった途端、ホッとしたように見えた気がした。
この頃の高村は、ぼんやりと過ごしていることが多くなっていてそれも気になる。
兄貴の「高村さん」にまつわる噂はやっぱり相変わらず聞こえてくるし、高村の様子がおかしいのはきっとそのせいだろう。
学校行事の続くこの時期、それでも言葉を交わせば高村はいつもと変わりなく笑顔も見せてくれていたし、友達と楽しそうにしている。あまり詮索しないのが一番だと思った。


その日の掃除時間、気が付くと高村の姿がなかった。松山もいない。
どうやらごみ当番のくせに仲間と遊んでいたオレを見限って、松山と二人で行ってしまったらしい。
戻ってきた高村は、他の連中が帰宅していく中、またぼんやりとしていた。
その背中にそっと近づいて後ろから高村の頬を両手で挟み込む。
「ひゃっ!」
間抜けな声を上げる高村の顔を覗き込み
「なんで松山と行ってんの?ゴミ捨て当番、オレとだったのに」
「遊んでるからでしょー?」
「声かけてよ」
話したいことがあったから、少し二人になりたかったのに。
高村はオレをじ―っと睨んでいたかと思うと、
「・・・・近い」
くるりと身をかわして、オレの手から逃げる。
もっと反論してくると思っていたのに、あっさりとかわされてしまった。
「・・・・高村、ひとつ聞いていい?」
「うん?」
「オレって高村にとってどんなん?」
高村は不思議そうな顔をして首を小さく傾げた。
「他のやつらとおんなじ?」
すると高村は、ああ、とようやく質問の意味が分かったように頷き、それから「違うよ」と言ってくれた。
「全然、違う」
高村の言葉にようやく安心する。
大丈夫。
席が離れてからあまり話せなくて、そのせいで少し考えすぎてるだけだ。
これまでがむしろはしゃぎ過ぎていただけなのかもしれない。
「今日の放課後、ちょっとだけ残ってて」
「え?なんで?」
キョトンとする高村にオレは苦笑いを浮かべるしかない。
「練習着に着替えたらすぐ戻ってくるから、それまで待ってて。いい?」
「・・・・う、うん?」
「絶対待っててよ、約束だからな?」
「・・・・うん、わかった」
オレとの約束通り、高村は教室で待っていてくれた。
自分の席で肘をついた姿勢で外をぼんやりと見つめながら深いため息をついていた。
オレは気づかれないようにロッカーの中の鞄を開けて、中に入れていた包みを取り出すと背中に隠す。
「高村」
声をかけると高村はひどく驚いて振り返った。
「え、え?いつの間に・・・・・」
立ち上がろうとする高村の前に、スッと包みを差し出す。
目を丸くして固まる高村。
「誕生日、おめでとう」
「え・・・・えぇ・・っ・・・・・・なんでっ・・・・」
「今日だよね、誕生日」
こくこくと高村は頷く。
「プレゼント。受け取って」
「え・・・え・・・・???」
「ほら、早く」
促すとようやく高村は手を伸ばすけれど、酷く躊躇っている。
仕方ないなあと苦笑いしつつオレは高村の手に包みを持たせた。
「えー・・・・うそぉ・・・・・ほんとに・・・?」
心底思いがけないって顔をする高村。
「ほんと。開けてみ?」
「え、でも・・・・」
「もう、ほら、早く」
恐る恐る、高村は包みのリボンをほどき、やっぱり恐る恐る、中を覗き込んで、息を呑んだ。
それからバっとオレを見上げる。その目が驚きだけでなくキラキラしてるのを見て、嬉しくなる。
「はい、どうぞ」
包みの中からそれを取り出し、高村の両手に乗せる。
「わー・・・・・・かわいい・・・っ」
小さな女の子みたいに目をキラキラ輝かせて、高村はそれをキュッと抱きしめる。
「わぁ・・・・・やわらかい~っ」
モフモフとぬいぐるみを抱きしめる姿に思わずオレの頬も緩む。
良かった。すっごく喜んでくれてる。
「良いの?ほんとに、もらっていいのっ?」
「高村のために選んだんだから、ちゃんともらってよ」
「あ、ありがとー・・・・・・・すごく可愛い・・・・っ」
頬を染めながらぬいぐるみを抱きしめたり見つめたりしてる高村の方がよっぽど可愛いです。
「あのっ、あのっ!!サッカーくんは来月だよね!何が欲しいっ?何でも言ってっ!!」
あ、オレの誕生日、知ってくれてる!!
オレまで舞い上がりそうになる。
「や、オレは別に・・・・」
欲しいのは、高村。
だけどそんなこと言ったら張り倒されるか、意味不明って顔をされるかどっちかだろう。
前者もイヤだけど、後者なんて立ち直れない気がする。
そして圧倒的に後者のような気がする。
だから絶対言えない。
「じゃあ、その日の昼休み、オレにちょうだい」
「え・・・そんなのいつもと変わんなくない?」
わ、マジで?そんな風に高村思ってくれてんの???
「体育館の二階の渡り廊下。あそこで待ち合わせな」
ほとんど人が通らないあそこなら二人きりで過ごせる。
「約束だからな?」
「う、うん、わかった」
まだひと月以上先の約束が今から楽しみで仕方なくなった。
席が離れて班も違って、高村自身休み時間に教室にいなかったり、いても寝ていたりして、言葉を交わすことはめっきり減っていた。英子たちも心配しているけれど、声をかけても「大丈夫」「平気」っていう返事ばかりだそうだ。
以前の人づきあいが苦手な高村に戻ってるみたいで心配になる。
そんな中、中間テストの結果が返ってきた。
それを高村はため息で折り畳むのを見たオレは放課後彼女を摑まえた。
居残りで勉強しようと誘うオレに高村は明らかに不審そうな顔をした。
「オレの苦手科目は高村が得意だしっ、オレはお前の苦手科目得意だし、一緒に勉強したら効率良いじゃんっ?」
「え、いや、サッカーくんとはレベルが違い過ぎなんですけど」
「そんなことないっ。ほら、オレのやる気も上がるしっ!!オレを助けると思って!!」
「そういうのはテスト前にするもんでしょー?なんで今?」胡散臭いものを見る目でオレを見てくる高村の視線が痛い。
「今から期末対策するんだよっ」
「えええっ??」
さすがに無理過ぎたか、と思ったけれど、高村は何やらツボったらしくしばらく笑い転げていた。
「ちょ・・・・サッカーく・・・・・ウケる・・・・・っ・・・・」
涙目になって笑う高村にホッとする。
良かった。高村、笑ってる。
「わかった。じゃあ、お願いします。ほんとはちょっと行き詰ってたんだー・・・・ありがとー」
誰にも言えない何かを抱えるしんどさは、オレにもわかる。
オレが高村の一番の理解者になれば、高村はオレのものになってくれるだろうか。

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