☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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24もどかしさの行きつく先7



それから季節は夏になり、夏休みに入ってオレは毎日サッカー漬けの毎日を過ごしていた。
電話は取り次いでもらいにくいと言っていた高村だったけれど、平日の昼間は一人でいることが多いらしく週に一回くらいの頻度で電話で話すことができた。高村は自分以外が出た時は無言で切ってくれと言っていたけれど、彼女に電話して出てもらえなかったことは無く、いつもちょっと慌てて電話をとってる感じが可愛いのと嬉しいのとでオレは彼女との電話がなによりの楽しみになっていた。
それに誰の目も耳も気にすることのない電話での高村は、学校では知ることができなかった、思ってた以上にずっとずっと真面目で純粋な面も知れて、ますます高村に惹かれていく。
けれど約束をした、試合の誘いは結局実現することは無かった。





大きな大会の試合はどれも遠方で、ようやく地元での練習試合が決まったと思ったら結局は荒井のチームで、あんな風に約束しておきながらオレは高村を誘う勇気がなかった。
いっそ高村に会える二学期にはやくなって欲しいとさえ思っていた、夏休みも終わりが近いある日。
松山たちに誘われてでかけた隣町の夏祭りで偶然高村に出会った。英子たちに誘われたらしい。学校でもよく話しているメンツが揃って自然に一緒に祭り会場を回る流れになり、願ってもいない機会を逃す気なんてないオレは高村の隣をキープする。
今日の高村は、春に公園で会った時のニットとジーンズというラフな格好とは全然違う印象の薄手の短めワンピース姿でいつもより大人びて見えた。
ヒールのサンダルのせいで目の合う高さもいつもと違って、なんとなく緊張する。
「元気、だった?」
「うん。サッカーくん、すごく焼けたね」
まぶしそうに目を細めて高村はオレを見上げる。
あー・・・・やっぱ試合呼べば良かった。なんで会わなかったんだろう。もったいないことした。
「高村は・・・白いまんまだな」
「焼くとやけどみたいになって痛いんだよね」
「え、じゃあ試合なんてすげーリスキーじゃんか」
「ちゃんと日焼け止め塗れば平気なんだよっ、だからそれは全然、平気なのっ」
慌てて言い募り、それからちょっと残念そうに
「でも、結局試合行けなかったしね」
と、高村は言った。
高村が試合をそんなに楽しみにしてくれてたなんて。
チクリと胸が痛んだ。
「・・・ほんと、ごめんな?」
「ううん、サッカーくんが謝ることじゃないよ。それより何度も電話かけてもらってごめんね?」
「や、それはっオレが話したかったからかけてんだしっ」
まるでオレの電話を試合の埋め合わせのために気を遣っての行動だと思っていそうな高村の言い方に慌てる。
高村はちょっと目を丸くしてそれからちょっとはにかむような笑顔を浮かべた。
「そ、そっか。あ、ありがとー」
う。
ダメだ、高村が可愛い。
「ん?」
気が付けば、みんなの視線がオレたちに集まっていた。
「ちょっとサッカー。稜ちゃんにばっか話してんじゃん?」
「グループ行動乱すなよー」
「高村の隣キープとか、ずるくね」
「相変わらず押せ押せねー」
口々にオレたちをからかう声。中には聞き捨てならない台詞まで混ざりこんでいる。
隣にいる高村は半分も意味を分かってないらしく、「え、なに?なんの話?」とオレやみんなを交互に見比べている。
「サッカーは高村のオトーサンだなって話だよ」
松山の言葉に高村はあろうことか「あー、なるほどー」と妙に納得していてめまいがした。
違う。断じて違う!誰がオトーサンだ!!松山、なんてこと言ってくれんだよ!!!
「あ、でも、サッカーくんはどっちかっていうとオカーサンっぽいかな」
「た、たかむら・・・・・・・」
脱力。
松山が肩を揺らして笑いをこらえてるのが見える。
くそ。お前なー、あとで覚えてろよ!
門限の加減で女子たちはそろそろ帰ることになった。聞けば高村は徒歩で来たようで
「ちょっと待て!お前、まさか徒歩で帰ろうとか言うんじゃないだろうな??」
「え?うん、そうだけどー」
「こんな真っ暗な中、一人で歩くとかありえない!バスで帰れ」
「えー?大丈夫だってばー。こっからだと乗り継ぎになるしもったいないじゃん」
「あーハイハイ、じゃあオトーサンと一緒に、高村を駅まで送ろうぜ」
オレと高村のやり取りを見ていた松山が助け舟を出してくれた。
なんか納得いかないけど。
ワイワイと騒ぎながら駅まで向かい、高村がバスに乗り込み出発するまで見送った。
そういうことに慣れていない高村は恐縮しきりだったけれど、決していやそうなんかじゃなくて、むしろ嬉しそうに見えた。
恥ずかしいだけで、慣れてないだけで。高村は普通の女の子だ。
そう思ってるのはオレだけじゃなかったらしい。高村を見送った後、高村への好意的な言葉が誰彼と上がり、それが自分のことのように嬉しくなる。
良かったな、高村。みんな少しずつ高村のこと知ってくれてるよ。


なんとなくふんわりした気分で帰宅したオレを待っていたのは、疲れた顔の親父と青い顔の良平だった。
雅彦とリクトは泣き疲れて眠っているという。
なにがあったのか、容易に察しがついた。
「・・・・・すまないな、せっかくのお祭りの日だったのに」
帰宅直後のオレの様子に親父は気が付いていたんだろう。オレは小さく首を横に振る。
親父のせいじゃない。
「ごめんなあ。俺が頼りなかったばかりに結局ダメだった」
良平は黙って両手を握りしめて唇を噛んで俯いている。
オレよりも先に両親に異変に気が付いていたのは良平だった。
年齢のわりに大人びた感覚の持ち主ではあるけれど、それでもまだ小学生であることに変わりはない。
オレが、しっかりしなきゃダメだ。
「平気だよ。リクトは連れて行かなかったんだ?」
予想外だった。絶対連れていくと思っていたのに。
「・・・・・・良平がな」
母親がリクトを連れて行こうとしたのを良平が必死で引き留めているところに親父が帰宅したそうだ。
説得にかかった親父を振り切って、結局リクトを諦めて一人で出て行った。
テーブルの上には離婚届があった。あんなの、テレビドラマでしか見たことなかったけれど。
「離婚、するの?」
こんな紙切れ一枚ですべてが終わるもんなんだ。
「ああ。すまないな」
オレはもう一度首を横に振る。
「親父は、悪くない」
悪いのは母親と相手の男だ。
とっくに壊れてた。
だけど、それでも。
はっきりと形になった今、気持ちは重く深く沈んだ。
「お前たちには、辛い思いばかりさせてしまう。ごめんな。父さん、頑張るから」
親父が良平の肩を抱きしめると、良平はようやくポロリと涙を零した。
たった一粒だけの雫。
それが真っ黒に日焼けした良平の手の甲で弾けた。
その光景が瞼の奥に焼き付いて離れなかった。

その夜。
眠れないまま布団の中で何度も寝返りを打つ。
これまでの家の中のごちゃごちゃを思い返したって仕方ないのに、そればかりがグルグル頭の中を巡っては気が滅入って、これから先の暮らしの不安が湧き上がってくる。母親がいなくなったことそのものよりも、家事や雅彦やリクトの世話とかそういう事務的なことに不安を感じている自分の薄情さに嫌気がさすけれど、そうなったのは母親のせいだという気持ちの方がずっと勝っていた。
もうずっと、この家に越してきてからずっと、いや、本当はそれよりもずっと前からオレたちは母親に裏切られていた。
オレたちのところに心がないことはとっくにわかっていた。
ぎこちない空気、ぎこちない会話、ぎこちない笑顔。
これでそれも終わりだ。
清々したじゃないか。
そう吹っ切りたいのに。
なんなんだよ、この気持ちは。


慣れない家事と、子供らしく泣いて暴れて拗ねる雅彦やリクトの世話に追われ、残りの夏休みはあっという間に過ぎていった。
ようやく始まった二学期。
学校の空気にホッとする。
教室の中、オレの席の隣に高村の姿を見つけて、駆け寄りたい気持ちを抑えながら歩み寄る。
夏祭りの日以来、高村への電話もできないままだったから余計に心が騒ぐ。
「おはよ、高村」
「おはよー。ん?なんかちょっと顔色悪くない?大丈夫?」
あっけなく高村に見抜かれてドキリとする。
「日焼けのせいだよ、全然平気」
笑ってみせると、気がかりそうな高村の瞳はホッとしたように緩んだ。
どこかから、ヒューっ、とからかうような声が聞こえてわずかに高村が動揺を見せた。
「・・・・・宿題、終わった?スゲ―量だったよな!オレ、なんかすげーテキトー。ヤバいかも」
冷やかしなんて気にするな。
席に腰かけながら高村に笑顔を向けると、
「う、うん。そーだね」
高村はぎこちなく頷いた。

HRでさっそく席替えのくじ引きが行われ、オレは高村のくじを覗き込む。
「え、マジで?」
「え?なに?」
「オレら、隣だよ」
「う、うそっ!?」
偶然とはいえ、一学期から続く高村と隣り合わせにクラス中がざわめく。
「座ろ」
高村の腕を引っ張って教室内を横切って並んで席に座る。
誰になにを言われたって平気だ。気にすることなんてなにもない。
「超ラッキー。またよろしくな!」
「う・・・・・うん・・・・・・」
高村もそんな風に誰かの視線ばかり気にするのなんかやめちまえ。
オレがいるじゃん。
誰になに言われても、オレが全部そんなの跳ねのけてやる。
だから何にも心配すんなよ。
なにがあっても高村の傍にいるから。
だから、高村はオレの傍から離れないでいろよ。

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