☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


13オレの事情 高村の事情7



小4の半端な時期に転入したクラスの隣の席が木内だった。
誰にでも優しくて、頭が良くて明るくて、加えて美人でスタイルもいい。
男女問わず人気者だった木内は、なにかと親切にしてくれて、すぐに新しいクラスになじむことができた。
ガキながらに木内の親切が単なる親切じゃないことくらいは薄々気が付いていた。
前の学校でもそれなりに女子に人気はあったし、転校するときには泣きながら手紙を渡されもした。
モテて嬉しくない男なんていない。
けれどそれまでオレは特定の女子を好きになることはなかったし
木内のことも、クラスメート以上の感情を持ったことなんてなかった。




男同士わいわい賑やかにやってる方が楽しかったし、そういうところに混ざって一緒に楽しめる女子の方が気楽だった。
木内はいつも女子とつるんでて、オレが仲間と遊ぶ時に木内が入ることはほとんどなかったし声をかけるやつはいないようだった。
オレも何度か声をかけたことはあったけれど、木内が乗ってくることは無かった。
「木内は大勢ダメなんだよ」
だからよしとけ、と仲間たちはオレを止めた。
大人びている木内には、わいわいと騒ぐのは子供じみて見えるのかもしれない。
オレはそう解釈していたが、実際はそうではなかった。
木内はプライドが高くて扱いにくい時があるという。
大勢いる場で彼女だけを気遣うのは小学生のガサツな男子にとっては至難の業だ。
「サッカー。お前はあいつに好かれてっから大丈夫だと思うけど、機嫌損ねないように気を付けろよー??」
からかい半分に忠告されることはあったけれど、あまりそれを深刻に受け取ってはいなかった。
木内とはそれからも普通にしていたし、気になることもなかった。
だから学年が進むうち、オレと木内ができてるという噂が広がったときは驚いた。
噂になるほど近しくした覚えがないのに。
オレは困惑し慌てたのに、木内はいつもと変わらず落ち着いていた。
「気にしないで。私たちは私たちなんだから」
ずっと仲良しでいようね、みたいなことを木内は言っていたと思うけれど、あまりよく覚えていない。
突然、本当に唐突に傍に寄ってきた木内に手を握られたことに、すっかり動揺していた。
そのくせ、すぐ目の前に立つ木内からなんだか甘い香りがしてたのはやけに覚えてる。
「ね?」
「う、うん」
なにが「ね?」なのかわからない。
だけど木内の瞳と目が合ったとたん、なにも考えられなくなってオレは頷いていた。

放課後、二人っきりの教室で手を握り合っていた。

先に広がっていた噂の信ぴょう性を上げるにはもってこいの状況を誰が見ていたかは知らない。
けれどもう言い訳のしようもないくらいに噂話は事実とされて、一方で木内はやっぱり変わりがなくて、それがなんとなく落ち着かない。

一方で、リクトが生まれてめでたいはずの家の中は妙に冷え冷えしていて、こっちも落ち着かなかった。
良平も同じだったらしく、こうなるともう気のせいじゃないと余計に気が滅入る。
学校が終わった後や休日も、オレたち兄弟は外にいる時間が長くなっていった時期でもあって
オレの気持ちに反する噂話はうっとおしいものでしかなく、次第にその原因の木内とも話さなくなっていた。
だからクラスメートが一人、また一人、と休みがちになり、そのうち全く来なくなっていることに
ようやく疑問を持ったのも、とんでもなく遅かった。

そしてその疑問を口にした時、仲間たちは複雑そうな顔をした。
「お前、なにも知らないのかよ」
非難めいた言葉にオレは焦った。
「え、なに?なんか深刻なのか?なんだよ、教えろよ」
誰もが言い渋る中、ようやく口を開いたのが渡辺だった。
「いじめだよ」
いじめ?こんなに仲のいいクラスで?誰がそんなことしてんだよ?
「木内」
「え・・・・・・・?」
誰かが「お前、マジで気づいてなかったのかよ」と言えば、「やっぱこいつは無関係だったんじゃん」と返す声。
「なんだよ、どういう意味だよ?」
「だーかーら!嫉妬だよ嫉妬。お前と仲の良い女子がターゲットにされてんだ」
「もしかしたら、サッカーもわかってて知らんぷりしてんのかと思ってたんだけど」
「違うっ!!」
だって、オレ、木内とはなんでもない!なんだよ?なんでこんな話。でたらめじゃないかっ。
「となると、噂も木内が仕組んだのかもな。はめられたんじゃね?」
「最初っから木内のサッカーへの態度は違ったもんな」
言葉を失う。
木内が仕組んだ?
そんなわけないと思う一方で、頭は勝手に理解してしまう。
これまでのことをつなぎ合わせたら、あまりにわかりやすいことばかりじゃないか。
「・・・・・・大丈夫?サッカー」
渡辺がオレを気遣う。
「あんたは悪くないよ」
「そーだよ、気にすんなよ。あいつが勝手にやってることだしお前は悪くない」
そんな簡単に済むことか?学校に来れない奴がいるのに。
「あの子は周りに大事にしてもらえないと機嫌悪いの。うちらはあの子に合わせて付き合ってるけど、
サッカーはそうゆうんじゃなく木内に優しいからさ・・・・。だから何も知らんふりしてた方がいいよ」

納得したわけじゃなかった。
だけど、これまで木内のそういう気性に黙って付き合ってきたやつらの忠告を無視することもできなかった。
どうすることもできないまま時間が過ぎ小5の三学期の終業式。
それを最後に渡辺は学校に来ないまま、卒業を迎えた。

渡辺が来なくなってすぐ、オレは渡辺に会いに行った。
男勝りで活発で明るくて面白いやつだった渡辺は、まるで別人のように無表情になっていた。
「あんたは何もするな。したら余計に悪いことになるだけ。何もしないでいるのが一番いい」
ついこの間はオレを気遣って言ってくれていた言葉が、今は怯えと諦めの言葉となって渡辺の口をつく。
オレはもう、何もできなかった。

表面的には何事もなく仲の良いクラスは続いた。
木内を中心に。
木内は相変わらずオレの前では【良い子】だったし、オレも【良いヤツ】を演じていた。
卒業式。誰とももう会いたくなくて逃げるように家に帰った。

中学が、一学年のクラスが二桁いくようなマンモス校で良かった。
小学の知り合いとは全員クラスが分かれた。木内は顔も合わすことがないくらい教室自体が遠い。
オレと木内のことは尾ひれがつきまくった形であちこちで噂され続けたけれど、もうどうでも良かった。
新しい学校、新しいクラス、新しい部活、そういう毎日の中で新しい友人はいくらでもできたし、
不登校だった渡辺たちも学校に戻ってきた。あいつらも楽しそうにしてる。
木内とはできるだけ顔を合わせないようにして、どうしても無理なときだけは一言二言、視線を合わすことなく言葉を交わすだけ。
一年が過ぎ、いつしかそれすら無くなっていた。
呼び出されるまで、木内のことなんて忘れていたくらいだったのに。


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