☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


11オレの事情 高村の事情5

日曜日は雲一つないいい天気。
結婚式には最高のお日和って奴だろう。
きっと高村は喜んでる。

式の途中、一人ずつ花を渡すだけ。

それだけのことだけど、その話をする高村はすごく嬉しそうで、
すごく、きれいだった。
まるで自分のことみたいに、幸せそうに話してくれた。

その日は午前中の部活を終えて、そのまま梅んちにみんなでなだれ込んだ。
梅本んちは高村んちと家族ぐるみの付き合いがある。
梅の上の兄貴が高村の兄貴と同じ歳で、引っ越してきたのも同じ時期だったことがきっかけだから
梅本も高村兄妹をよく知っていた。
梅の兄貴はやっぱりサッカー部で、オレたちにとっても先輩で、この人は面倒見がいい人で卒業した今でも後輩たちに慕われている。
夕方、梅本先輩が帰宅したころにはもうオレしか残っていなかったけれど、それでも先輩は喜んでくれた。
「荒井も駅で会ってさ、連れてきた」
「おっす」
新しい中学の制服を着た荒井を初めて見た。
今、帰ってきたところなのか。

ゆっくりして行けよ、と梅本先輩に言われてオレたちはその言葉に甘えさせてもらう。
荒井は学校が分かれて以来の梅本の家で、ちょっと懐かしがっていた。
先輩を中心にサッカー話や学校話でひとしきり盛り上がる。
先輩は、この春から私立のスポーツが盛んな高校に進学していて、そこの運動部の話は面白かった。
「高校はちゃんといっとけよ。どこでもいいから行くんだぞ。どこでもよくねえっていうなら勉強ちゃんとしとけ」
二個上の先輩の言葉の重さにオレたちは頷く。
「そーいや、サッカー。稜ちゃんと仲良しだって???」
突然先輩につつかれてオレは焦った。
「や、そんなことは、ないっす」
梅、なに余計なことを先輩に話してんだよ。
睨みつけるけど、梅は笑ってるし、荒井は我関せずの知らんぷりだ。
「またまた~。イケメンはいいよな、可愛い子と簡単に仲良くなれっからさー」
ひとしきり先輩にからかわれて、オレはいたたまれなくなる。
高村とは全然簡単じゃない。
なんで急に高村の話・・・・と思ってハッとする。
高村の兄貴は、高校には行かなかったって聞いてる。行けなかったのか行かなかったのかは知らないけれど、このあたりは工場も多くて中卒でも働く場所はあるから、別に高村の兄貴が特別珍しいわけでもなかった。
けど、きっと梅本先輩はそういう高村の兄貴の身を案じているのかもしれない。
今だって「幼馴染の稜ちゃん」の様子を梅やオレに聞いてくるのはオレをからかうためじゃなく、あいつがどうしてるか気にしてるからだろう。
「高村って、昔はどんな子だったんすか」
「お。なんだなんだ、荒井も興味あんのか?まさかここ、恋敵ってやつ??」
「「違います」」
オレも荒井も即答。先輩はおかしそうに笑って、それからちょっと遠い目をした。
「稜ちゃん、いつもショータロのあとにくっついてて可愛かったよ。ショータロもなんやかんや言って稜ちゃん可愛がっててさ。こいつが稜ちゃんとけんかスッじゃん?で稜ちゃん泣かすじゃん?そうすっと容赦なしにショータロに殴られっからこいつはショータロが怖くて嫌いだったんだよな」
うんうん、と梅は笑って頷く。
「稜ちゃ、高村が悪い時でも絶対俺のせいになる。あいつにも殴られてんのにショーちゃんにも殴られて損しかない」
梅が肩をすくめてトホホって顔をするもんだから、オレたちは声をあげて笑った。
梅にとっては今もきっと「ショーちゃん」「稜ちゃん」のままなんだな。
「稜ちゃん」と叩き合いの喧嘩をしてたことも、なんか微笑ましくなる。
梅は大人しいから逆にあいつに泣かされたこともあったかもしれない。
「けどそういうのが行き過ぎて、むしろあだになるっつーの?小学に上がってからは稜ちゃん、すっかりショータロには懐かなくなったし、よく蔭で一人ぼっちで泣いてたよ。クラスのやつらにいじめられるようになってさ。けどそれを聞きつけたショータロがやり返すだろ?で問題になるわけよ。稜ちゃんがいじめられてることはほっとかれて、ショータロが暴力振るったことだけがさ。でもショータロは自分が間違ってるとは思ってないわけよ。けどそれは稜ちゃんにとってどうかってことがあいつはわかんないからさ。稜ちゃんにっとってはやっぱ兄妹だし、兄貴が自分のためにしたってこともわかってるしさ、一人で抱え込んで我慢してんだよ。可哀想だよな」
松山の言ってたのは、このことか。
「うちの親が見かねて高村のおばさんに稜ちゃんが気の毒だって言ったことあったんだけど」
話にならなかったっと言う。
「あそこは、なにがなんでも長男のショータロが、あんなんでも一番大事みたいでさ・・・・」
意味わからん、と先輩は深いため息をついた。
「ショータロもけっして悪い奴じゃないんだ。下の面倒見もすごくいいし、ハルなんかほぼ毎日あの家に入り浸ってるって話だし」
ぎょっとした。
ハルさんと仲が良さそうなのは何となく知ってたけれど、毎日家に入り浸ってる???
「だいたい毎日、高村んちに向かって歩いてくハルさん見かける」
梅が言う。
「出入り自由だぞ、あの家」
呆れ気味に先輩は言う。
「ショータロの目があるっていってもさ、やっぱ、そーゆーのはなぁ・・・・。稜ちゃん落ち着かないだろうなぁ」
落ち着かないどころじゃないだろう。
あいつが一人になりたがるのは、一人になれる時間も場所も学校しかないからじゃないのか。
放課後、人がいなくなるまで残っているのだって、家に帰りたくないからじゃないのか。
ニコニコとしていた梅も今は笑顔が消えている。
幼馴染の梅が今あまり高村と話をしないのは、ただ照れくさいだけじゃなくて、事情を知りすぎてかける言葉を見つけられないからかもしれない。
「だしサッカー、お前、稜ちゃんのこと頼んだぞ?」
がしっと肩を掴まれる。
「いや、だから、そんなんじゃないっす!」
オレ、全然頼りにされてもないし。
「お前もだ荒井。おんなじ町内なんだし、時々は顔見に行ってこい。お前なら多少痛い目に遭っても頑丈そうだしなっ」
「なんすかそれ!!」

晩御飯まで梅本の家で世話になって、オレと荒井は結構な時間に梅本んちを出た。
こんな遅くなったのは、梅ンちのまだ幼稚園児の弟と遊び過ぎたからだ。
うちにも同じくらいの弟がいるって知って、梅のおふくろさんはぜひ一度遊びに来てと言ってくれた。
梅本兄弟の母親だけあって朗らかで笑顔が絶えない人だった。
細やかな気を配ってくれる、こんな人がうちの母親の側にいてくれたらどんなに良かっただろう。
でももう多分、手遅れだってこと、このころのオレは薄々感じていた。

「あ、サッカー、バス道から帰れ。神社道は通んな」
「え、近道じゃないっすか」
「やめといた方がいい。あそこは夜は通るな。嫌なもんに出くわすかもしれないから」
脳裏にこの間の光景が浮かんだ。
けどあんなのは別に気にしなきゃいいだけのことで。
あの時は突然だったから気が動転したけど、考えようによっちゃカップルがいちゃつくにはもってこいの場所だ。
だけど先輩は厳しい顔をした。
「あっこは昔っから痴漢とか不審者が多いんだよ。すぐそばに無駄に空き地もあるしな」
「俺ら男だし」
荒井の言葉にさらに先輩は険しい顔をした。
「この間、あっこで女の子襲われたんだよ」
おふくろたちが話してた。町内の女子高生が被害に遭ったって。
こういう話は警察沙汰にはなりにくい。人の口にも上りにくい。でも実際にあった話だよ。
「お前らも、知り合いの女の子にはちゃんと言っておいてやれ。友達がそんな目にあうの嫌だろ」
被害にあった子は先輩の知り合いだったんじゃないかって気がした。
ものすごく苦いものを噛んだような顔をしてる先輩を見てそう思った。

梅本んちを出て、オレと荒井は何とはなしに互いを見た。
「高村たちはもっと早い時間にバスで帰った。ちゃんと見た」
いつになくまじめな荒井の言葉にホッと胸を撫で下ろす。
その荒井は制服のポケットから飴を取り出した。
「あいつ、これ好きなんだ」
それだけ言って仕舞う。
意味が分からずオレは荒井を見たけど荒井はオレを見ていない。
「似合わねーよな」
宙に向けて吐き出された呟きは荒井自身にむけた言葉のようで、胸がずきりとした。
荒井、なにを似合わねーって言ってるんだよ。
「気を付けて帰れよ。痴女に襲われねーよになっ」
「ばっ、なにいってんだよっ」
ガハハといつものあいつらしい豪快な笑い声を残して、荒井はとっとと帰って行ってしまった。

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