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7 オレの事情 高村の事情1

浮かれて帰宅したオレを待っていたのはおふくろとリクトだった。

正確に言えば、おふくろはオレを待ってなんかいない。
ダイニングで携帯の画面をいじっている背中。
「・・・・ただいま」
声をかけるとびくりと大きく肩を揺らし携帯を閉じながら慌ててオレを振り返る。
「おかえり」
笑顔を浮かべる母親と視線を合わすことができず、庭で楽しげに砂遊びをしているリクトの方へ向かった。


コンコン。
窓を叩くと、
「わぁっ、にーちゃんっおかえり――――――っ!!!」
窓に飛びついてきた。おかげで窓は泥まみれだ。
四人兄弟の中で一人だけ年の離れた末弟のリクトは、そのちっちゃい体のどこにそんなパワーがあるのか不思議なくらいに元気でやんちゃだ。うちの家はリクトを中心に動いている。リクトの存在がこの家の中をどうにかまともに機能させている。
嬉しそうな声をあげながらリクトは庭から玄関に走り込んで来て、部屋に上がろうとするのをおふくろと二人で阻止した。
「こら、リクト!もう!服の中まで泥だらけじゃない!」
怒りながら笑顔のおふくろ。リクトを見る目は優しい。
「リクト。風呂入るぞ。どろんこだ」
「え!!いっしょに?わぁい、やったぁ!」
「お湯入れてくる」
給湯器のボタンを押しに行っている間に玄関でまた母親の慌てる声が聞こえてきた。振り返れば服を全部脱いだリクトがこっちめがけて走ってくる。
「おいおい、まだ入れねぇだろ」
全力で突進してきたリクトを勢いよく担ぎ上げると歓声を上げて手足をバタつかせてくる。
こうなるともうリクトの大好きな空中戦だ。
両腕でリクトの体をぐるぐる回したり、急降下をしてみたり、力技でリクトの相手をしてやる。
親父譲りのがたいデカめのうちの兄弟の中で、リクトはひときわ小柄だ。
おふくろも決して小さい方ではない。
リクトの相手をしているとまるで子犬とじゃれているみたいな感覚になる。

「リクトのこと、頼んでもいい?少し買い物行ってくる。何か食べたいものある?」
「ハンバーグっ!」
「またかよっ」
「ふふっ、じゃあ行ってきます」

うちの親父がどんな人かと聞かれたら、子煩悩で愛妻家、というのが一番的確な表現なんだと思う。
しっかり者の母親と違って、親父はどこか抜けてて家事もほとんどできない人だ。
ヤル気はあるけれど才能がない。オレや良平の方がまだましだろう。
それでも、家族のために何かしようと頑張ってくれてんのは、すっげー分かる。
4年前の引っ越しは突然ではあったけれど、いわゆる高齢出産になるおふくろの体を労わるために田舎暮らしを決めたんだと思ってた。

オレたち兄弟にとっては外で遊ぶ場所に事欠かない丁度いいくらいの田舎加減はむしろ気に入っていた。
新興住宅地には同じように都会から越してきた子供もたくさんいて、すぐに馴染むことができた。
最初の1年は、本当に楽しいばかりだったんだ。

だけどリクトが生まれてきてから、少しずつ、この家の空気が変わっていった。
「リクくんはお父さん似かしら、お母さん似かしら」
近所のおばさんたちの何気ないこんな言葉におふくろは過敏に反応するようになった。
次第に小さなリクトと二人、家にこもりがちになった。
子供の頭じゃ分からないことだらけだった。
仲が良かった両親が、気が付けばあまり会話をしなくなっていた。
以前は家族でよく出かけていたのに、それもほとんどなくなった。
親父はおふくろに気を遣っているように見えるし、おふくろはそれをどこか拒んでいるようにも見えて、そう見えることが怖かったしそんな風に見える自分を疑ったりもした。
それと重なるように、上手くいってたはずの学校も面白くないことが増えてきた。
オレも良平も雅彦も、学校が終わっても遅くまで商店街をぶらつく日が増えた。
商店街の人たちは優しい。
けれどその優しさも、時々怖くも感じた。
この人たちは、オレの家で起こってることを、知ってるんじゃないかって。
少しずつ、自分たちの暮らしが何かに壊されていくのを感じて、けれど何もできないまま、毎日を過ごしてる。


夕食は、焼き魚だった。
リクトはリクエストが通らず拗ねていたが、育ち盛りのオレたち兄弟も決してうれしい献立ではない。
けれど親父は「うまいうまい」と食べている。

そういうのも、今はなにか空回っているみたいで苦しい。

オレは早々に食べ終えて、テスト勉強を理由に自室にこもった。
ここに越してきて一番良かったのは、個室をもらえたことだ。
小学の弟たちは相部屋だが、中学になったら個室という約束だった。
良平は来年が今から待ち遠しいと言い続けているし、雅彦はそのあとリクトと相部屋にされることに納得がいかない様子だ。
雅彦はリクトといまだに同レベルで喧嘩をするから、さすがにいくら呑気な親父でもよく雅彦を怒っていた。
今もリビングで喧嘩をしたんだろう、なにやら騒がしいが、オレには関係ない。
教科書を広げ、テスト勉強に取り掛かった。

ふと、放課後に高村と過ごしたことを思い出す。
2年になって、あいつのことを考えない日がない。

あいつも、噂が絶えないという意味ではオレと一緒だった。
あいつの場合は、あいつ自身じゃなくて、その兄貴の「高村」だけれど。
なにも知らなかったオレでも、中学に入ってからは兄貴の「高村さん」の名は自然と耳に入ってきたものだった。
兄貴じゃない方の「高村」の話を初めて聞いたのは、まだ中1になりたての頃。
週末の練習後、サッカー部の1年ばっかで居残ってた時のことだった。



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