☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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109 最後の年21

いたたまれない空気の中、お互いに距離を置いたまま残っていたドリンクとケーキを口にする。

「・・・そろそろ戻ろっか」

まだ休憩時間は残っていたけれど、このまま二人きりもなんだか気づまりだし・・・・・。
立ち上がろうとした私の腕を彼が掴む。
「行くなよ。・・・・・まだ時間、あんじゃん。もう少し高村といたい」
「・・・うん」
もう一度座りかけたその時。
「なんだよ」
うってかわって突き放すようなサッカーくんの言葉に思わず固まる。

「なんか用??」
けれど彼は私じゃなくて、その向こうを見ていた。
振り返れば、そこにはナル君。
「いや、ごめんね?邪魔する気はないんだけどさ、お客さん多すぎて。
ちょー――っと早めに戻ってきてくれるとありがたいな―――って」
「チッ。何やってんだよ。話、違うだろ」
「ごめんって。あ、稜ちゃんはゆっくりで大丈夫」
「女子も店に出せよ。こいつらのグループ出せば回るだろ」
「えー、でもそれじゃ」
「さっさとさばいて早く店じまいしちまえよ。最後の学祭だろ」
「そうだね。じゃあ手伝ってもらっていい?」
「もちろん。いこ」
クラスのみんなは、サッカーくんの提案にすぐに乗ってくれた。
売り子役の女子が支度をしていると、田沼くん(とそのグループ)が目ざとくこっちを見つけて駆けてきた。
「稜ちゃん先輩、売り子するんだっ??うわ、やった!!」
「やっと出し物終わって、今から行くとこだったんだーーラッキー――」
ちょっと賑やかだけど、廊下での騒がしさに通りすがりの子たちもちらほらこっちを見て足を止める。
田沼くんたちは、二年生でも目立つグループだから彼らがこの店に今から来るっていうのはある意味宣伝になるのかもしれない。

その読みは当たって、彼ら目当ての女の子たちもやってきて、お店の中はかなり賑やかになった。
まだなかなかチケットの回収ができていないことを知った田沼くんたちが宣伝に回ってくれたおかげで、残りのお客さんたちも来店してくれて大助かりだった。
一通りの仕事が終わってから、裏方ベースの隅っこで店内を覗いていたらサッカーくんがいつの間にか後ろに立っていた。
「お疲れ。やっぱ女子がやった方が早い」
「変な恥じらいはしないからね」
「うるせーな。それを楽しんでんのはお前ら女子だろ。悪趣味だ。けどやっぱ、高村は慣れてるな。校則違反のバイトしてただけある」
「うるさいなー」
「今日の後始末のあと、まだなんか会議みたいなあるらしくてさ。ごめん、待っててもらっていい?」
「うん、平気。大変だね」
「水島やナルたちはずっとこんなことしてたんだろ。あいつらすごいよな」
「うん」

早めに店じまいができたおかげで、みんな最後の学祭を楽しく回ることができたようだった。
田沼くんたちにお礼を言わないといけないなあ。
私とサッカーくんと言えば、実は回るどころじゃなくて。
店の片づけが思いがけず長引いてしまって、いつもの顔ぶれで後始末が終わったころには学祭も終了時間。
「なんかごめんねぇ」
教室に残っているのはナル君と私の二人。
サッカーくんを待つ間、彼はなぜか残ってくれていた。
校舎のあちこちからまだかたづけの気配はするけれど、大方の生徒はもう帰っている。
静かなものだ。

「休憩、邪魔してごめんね。悪気はなかったんだけど」
「ううん、気にしてないよ」
サッカーくんは気にしてるかもだけど。
「オレね、すごく嬉しいって思ってんだ。サッカー、やっと気持ち伝えられたんだなってさ」
ナル君は、少なくともクラスが一緒になった去年の時点でサッカーくんとは友達でも何でもなかったはずだ。
関わりができたとしたら、球技大会の時。合宿の時。
急激に仲良くなってる気がしたのは、ここ最近のこと。
「噂は知ってたよ。あれだけ騒がれてれば当たり前に耳に入る」
「そ、そんなに?」
「アハハ、稜ちゃんがそういうとこ鈍すぎるんだよ。まあ、最初はてっきり、噂は本当で、だから嫌ってるのかと思ってたんだ。露骨に避けてたでしょ」
「・・・・う・・・・・・まあ、そうかな・・・・」
見ないふり、してた。
「けどナギの事件の時」
高2の春。英語教師のナギに授業中異常なまでに近づかれた。
「泣くの堪えて教室出て行った稜ちゃんを彼が一番最初に追いかけてった」
「え」
「知らなかった?オレより先に稜ちゃんの側にいた。声もかけられないでただ突っ立ってただけだったけどね」
あの時、廊下にしゃがみ込んでいた私を助けてくれたのはナル君で。
保健室に付き添ってくれたのも、センセイを呼んできてくれたのもナル君だった。
あのころの私とサッカーくんは口を聞くどころか視線すら合わせなかったはずだ。
「不思議でさ。二人が同中ってのは聞いたけど、むしろ険悪そうだったし?
追いかけといて声かけないとか、なんだ?って思ったけど。
あれ、声かけられなかったんだね。どうしていいかわからなかったんだ、あいつ。
すっごく不器用なんだって、付き合ってくうちに分かったよ。一途だっていうのもね」
ニヤリとナル君は意味ありげに笑う。
「覚えてる?二人がもう結構仲良しになってた頃だったけどさ。ここで水島と3人でいた時に廊下でサッカーがコクられてたののぞき見したことあったでしょ?」
「わたしはのぞいてないからっ」
「ああ、そうだった、耳塞いで必死に聞かないようにしてたよね―――。可愛かった」
あはははとナル君は楽しげに笑う。
「自分には大事な子がいるからって断ってた。自分はその子じゃないとだめなんだって、そうはっきり言ってたよ。それ、誰のことかわかるよね?」
「・・・・・・・・」
頷く、というより俯いてしまう。
恥ずかしいだけじゃなくて、でも嬉しいだけでもなくて。
あの後、サッカーくんは「聞いててくれたらよかったのに」って言ってた。
サッカーくんはもうずっと前から、そうやって私に伝えようとしてくれてたのに私はずっとなんにも気が付かないでいた。

「オレも水島もね、ほんとに二人のこと応援してたんだからね?あいつあんまりしゃべんないし態度もああだし、誤解されやすいからさ。損ばっかしてるじゃん?なんとかしてやりたいなーって思ってたけど、でも何とかしようとすると怒りそうだし」
ああ、それ、わかる。
サッカーくん、そういうところすごくある。
「稜ちゃんもそういうところあったよね。遠慮ばっかしてなかなか最初は頼ってくれなかった。
稜ちゃんはクラス違う時からいろいろオレを助けてくれてオレは嬉しかったよ」
「私も、水島君とナル君のおかげでクラスにもなじめたし、みんなとも知り合えたよ。今だっていろいろ助けてもらってばかり」
そしてこんな風にいろんなことを話せる友達になれた。
「サッカーから稜ちゃんと付き合うことになったからって報告来たときはオレら、万歳したからね。
言い広めてほしいって言われて、張り切っちゃった」
嬉しそうだ。ナル君。
「あいつ、すごく大事なんだよ稜ちゃんのこと。きっと俺らが知り合う前からずっとね。そういうの、何も言わないけど伝わってくる」
「・・・・・サッカーくんは、自分の気持ちに正直な人で、でも周りのこともちゃんと見えてる人で・・・・。
だから、時々、戸惑うの。私は、あまり素直になれないし、つい、いろんな事考えてしまうというか・・・・・」
「今日の休憩の時も、早々に離れようとしてたよねー」
「み、見てたのっ?」
「タイミングを計ってたんだってば。なんか微妙な空気だなって思ってさぁ」
ナル君の笑い方を見る限り、結構前からいたんじゃないだろうかと思えてきた。
悪趣味だ。ほんとに。
「あいつが素直なのは稜ちゃん限定だよ。前に比べたらだいぶ打ち解けてくれたけどそれでも本音を言ってくれることはあんまりないんだ。でも稜ちゃんのことになると違う。俺たちにわざわざ知らせたのだって稜ちゃんを守りたかったからでしょ?
オレの予想だと、あいつ多分今頃手紙の相手に断りに行ってるよ」
「そんなことまで知ってるのっ???」
「いや、だって無理矢理渡されてる現場、売り子の男どもは見てるから。ほんとに露骨に嫌そうな顔してたからね、あいつ」
だから心配しないでいいんだよ、とナル君は言う。
「俺はさ、彼女に本音言うとかあんまないから、ちょっとうらやましい」
「そういうもの?」
「人それぞれだよ」
ナル君はにっこりと笑う。
「稜ちゃんに望むことがあるならきっとはっきり言うんじゃない?だからあまり細かなことを気にしないで稜ちゃんもしたいように振る舞えばいいんじゃないかな。あ、戻ってきたよ」
廊下に人影。
ガラリと教室のドアが開く。
現れたのはサッカーくんだった。
「おつかれー」
「ああ」
「んじゃ、また明日、打ち上げでね」
バイバイとナル君は手を振って教室を出て行った。


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