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「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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107 最後の年19


沢井さんとの電話のあと。
私は小さなため息をついた。

ああ。
本当に、沢井さんはすごい人だ。

机の棚に立ててある月の本を取り出してみる。
奏さんの存在は、私のあまりにちっぽけでつまらない人生の中に差した光そのものだった。
私の何もかもを救い上げて、大切に守ってくれた奏さん。
この本は、奏さんから奏さんのお父さん、沢井さん、そしてサッカーくんの手を経て私の元に来た。

そこに、意味を見出してみたくなる。




ページをめくるたび、奏さんとの想い出が蘇る。
あまりに大切で綺麗な想い出ばかりだ。
まだちっとも涙なしでは見られないままだけれど、
私にとってかけがえのない、幸せに満ちていた時間がここに詰まっている。

最後のページには、彼と私の写真。

写真なんてすごく苦手だし、上手く笑えないし、好きじゃなかった。

だけどこの写真の私は、自分でもびっくりするくらいに自然に笑ってる。

~ 今日一日、良い顔して笑ってたぞ ~

沢井さんはそう言ってた。
沢井さんは嘘はつかない。
奏さんといた時の私を一番よく知ってる人だ。

「・・・・・・・・・・だったら、いいな・・・・」

サッカーくんのことを好きだととっくに自覚してる。
だけど、奏さんを忘れていくんじゃないかって。
奏さんを一人にしちゃうって、そういう思いはどれほど時間が経っても、ぬぐえない。

~ 奏介の気持ちも彼の気持ちも、大事に出来るのは稜ちゃんしかいないんだぞ ~

見透かされているんだと思う。
私のずるさや弱さを沢井さんには全部。
自分の力だけで前に進むことができない私の背中を沢井さんが押してくれた。
大切な人を喪った痛みや怖さを知っている沢井さんはそれでも詩織さんと歩く未来を選んだ。

「すごいなぁ、奏さんも、沢井さんも」

そんな人たちと傍にいて、自分が何も変われないんじゃ情けないよね。

奏さんの笑顔に向かって、笑った。
随分情けない笑顔だと思うけれど。


翌朝。
いつもサッカーくんと待ち合わせていた場所で彼を待っていた。
いつもと同じ時間にサッカーくんがやってきて、私を見ると驚いた顔をして足早にやってきた。
「来ないかと思ってた」
「そんなことするわけないよ」
サッカーくんの言葉に、随分私って信用無いなと思ったけれど、そんなの当然かと苦笑いする。
「昨日は・・・・・・ありがと」
怪訝そうな、どこか警戒した様子のサッカーくんの視線。
「昨日のことならもういいから。高村に何か言ってもらいたくて言ったんじゃないんだ」
「それでも、嬉しかったから。今の私にはもったいないくらいの言葉だったから」
「・・・・・高村。いいから。もうほんとに何も言うなって」
少し強引にサッカーくんは私の腕を掴んで改札口に向かう。
その腕を私も掴み返すと、彼はびっくりして振り返った。
「サッカーくん。聞いて」
「やだ」
「私ね」
「聞きたくない」
まるで駄々っ子だ。
けど言うって決めたから。
「私、サッカーくんのこと好き」
「聞きたくないって言って・・・・ん?・・・・え?」
キョトンとなったサッカーくんを置いて急いでひとり改札を抜けてホームに向かう私の背に
改札のブザー音と、慌てたサッカーくんの声が聞こえてきた。
なんだかよくわからないけど、これで多分彼は一本後の電車になるはず!!

うわーーーー。
恥ずかしすぎる!!
電車、早く!!!!
ホームに入ってきた電車に急いで乗り込む。
ところがすぐ後ろからサッカーくんも飛び乗ってきた。
うっそーーーーっ???
「おまえ・・・っ・・・あのなっ・・・・」
軽く息を乱したサッカーくんが怒り気味に私の肩を掴む。
「いろいろ、言いたいけど・・・・っ、落ち着くまで、ちょっ、待ってろ」
肩で息をしているサッカーくんは、しばらく窓の外を睨んでいた。
肩を掴まれたままの私は、ひやひやしながら黙って彼の隣で俯いていた。

ああ、どうしよう。
どうしたらいいの。
告白とか、したことないし。
とにかく自分の気持ちを言おうとそればっかで、あとのこと考えてなかった――――。
サッカーくんが告白されるところを一度見たことあるけれど
正確には告白されるっぽいところと、そのあとの彼の不機嫌そうな様子を見ただけだけど――――。
今って、不機嫌?
言うなって言ってんのに無理矢理言ったから怒ってるよね???
わーーーー、どうしようっ???

「・・・・・・・・・取り消しとか、ないからな」
不意にぼそりと頭の上から降りて来た彼の声。
「う、うん?」
「なんだよ、その頼りない返事は」
「や、だって、取り消すとか、あるの?」
「ねえよ」
「え?あっ!昨日のサッカーくんの言葉を取り消すってこと?」
「取り消すんじゃねえよ!じゃなくてお前の今言ったやつのことだよ!」
「え?え?取り消したほうがいいの?」
「よくないっ。取り消し禁止だ」
「じゃあなんで聞いたの?」
「知るかよっ」
「え、なんで怒ってんの?」
「動揺してんだよっ」
「な、なんで・・・?」
「んなもん、急にコクられたら誰でも焦るだろっ?」
「・・・・・・そんな経験ないんでわかんないーーー」
「昨日しただろうがっ!」
「あ」
そうでした。
「でもー。サッカーくんが焦ってるの見たことないよ?」
「・・・・・今見てるだろ」
心底うんざりした様子のサッカーくん。
「なんなんだよ、高村は。昨日は泣きそうな顔してたのに・・・心臓に悪い」
「・・・・ごめん、なさい」
「いいって。つかなんかまだ信じらんない。完全にフライングしたと思ってたからさ、
高村がまたオレのこと避けても仕方ないって思ってたし。
まさかあのタイミングでコクられるなんて思いもしなかった」
驚きつつも思い出し笑い状態のサッカーくんに私は複雑な思いだった。
「だって、どうしたらいいかわかんなかったんだもん。呼び出しとかしてからのほうが良かったの?」
「そーゆー問題じゃないからな?」
「意味わかんない」
「高村らしいよな」
楽しげなサッカーくんになんだかだんだん悔しくもなってくる。
「今、言わなきゃ良かったとか思ってるだろ」
「ええっ??なんでわかんのっ?」
「お前なぁ」
サッカーくんはまた笑いだす。
それから参ったなーと楽しそうに言った。
「高村は変わんないな、ずっと」
褒められてんのかけなされてんのかわからないから私は黙って彼を見上げる。
目が合うとサッカーくんはうってかわって真面目な顔になる。
「なんかさ、嘘みたいで怖い」
「え?」
「あんまり長い間片思いしてたからかな。なんか変。落ち着かない」
それからサッカーくんは急に自分の手を制服のズボンでゴシゴシと拭くと、照れた様子で差し出してきた。
それが手をつなごうという意思表示だとわかって慌てて私も手を拭いて彼の手を取った。
お互い照れくさくなって、目をそらしてしまったけれど。
「大事にする」
彼の誠意のこもった言葉に私は小さく頷いた。




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