☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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103 最後の年15


なんだかよくわからないけれど、今はあまり近づかない方がいいみたい。
クッションごと、サッカーくんから一人分の距離を取る。
そうしたら、サッカーくんは明らかにム―――っとする。
うわーもう!なんなの?

「離れろなんて言ってない」
「近いのダメなんでしょ」
「ダメなんて言ってない」
「じゃどうしたらいいの?」

「・・・・」
サッカーくんは無言のふてくされた顔のままでクッションごと私を引き寄せる。
至近距離で目と目が合うと、彼はほんの少し息をつめた。
逸らすんじゃないかと思ったけれど、まっすぐに私を見据える。
「高村はオレの隣にいろ」
「・・・・・でも・・・」
「いーから。お前は俺の言うこと聞いてればいいんだよ」
上から目線セリフを吐いておきながら顔を赤らめてそっぽを向いてしまう彼の姿になんだか毒気を抜かれてしまう。
こんな風に困り切ってしまう彼の姿なんて、見たことあっただろうか。


互いの腕が触れ合った距離で、なんとなく無言の時間が続く。
なんの話をしてたんだっけ。
あそうそう。
サッカーくんの熱がないか確かめたあたりから、私に悩みがあるんじゃないかってなって、そこからなぜか私がサッカーくんに触れるのがどうとかこうとか、おかしな話になってしまったんだった。
彼の熱はもう下がってた。
私も悩みなんてない。
彼の隣にいろと言い切られた。
それでこの話は終わったはずなのに。

お互いの触れ合った腕だけがひどく熱い気がして。
なんだかそこだけ自分の体じゃないような、まるで感覚がないような、変な感じがする。
動かしたいのか動かしたくないのかさえ分からなくなってくる。
いったいどうしちゃったんだろう?
腕の自由を失ったせいで変なこわばりを持ったまま床についていた手の上に、サッカーくんの大きな手が包み込むように重なった。
「冷えてる。お前って夏でも体温低いんだな」
強く握ってくるわけでもなく、触れるだけの軽いものでもなく、私の指の間に彼の指がするりと絡みつく。
彼の手の動きはひどく優しくて、ドクンと心臓が大きく跳ねる。

手をつないだことなんて、もう何度だってある。
そんな時は決まってサッカーくんは強引にしっかりと手を掴んでいた。
こんな風に、柔らかく包み込まれるような触れ方はしたことがなかった。
毎週のようにこの部屋に来ていたけれど、こんな風に並んで座ったことさえなかった。
並んで座るなんて、電車くらいだった。

沈黙が続く。
繋いだ手から彼の温度が伝わってくる。
「汗、かいてきた、ごめん」
「いいよ、オレも同じだし」
ほどけませんでした。

こんな風に彼が手を握ってくるのは、不機嫌だったり怒っていたり、なんだか気持ちが昂ぶってる時で。
けれど今の彼は落ち着いている。
なんだか、変。
落ち着かない。
落ち着かないのがなんでなのかわからなくて、さらに落ち着かない。
「いや?オレとこうしてんの」
気遣うように覗き込まれて、慌てて首を横に振る。
「キンチョー、する」
それはするりと口をついて出た言葉だった。
言葉にして初めて、自分が緊張してるんだってわかってひどく動揺した。
これじゃ、さっきのサッカーくんみたいじゃん。
サッカーくんも同じ気持ちだったみたいでニヤリと笑われた。
「よし」
「なにがよしよ?」
「別にぃ」
あからさまにご機嫌な様子のサッカーくんに憎たらしくも思ったけれど、でもこういうサッカーくんを見ていられるのはやっぱり嬉しい。

「な、講習の休みの時にさ、どっかでかけよ?」
「・・・・え?出かける?」
一瞬、四男くんのところに行くのかと思った。
「息抜きにさ。どこが良い?高村の行きたいとこ教えて」
予想とは裏腹に彼は私の行きたいところを聞いてくる。
「え・・・・え・・・・・・えーと・・・・・・・・・」
「買い物でもいいし、映画でもいい。海・・・はちょっと遠いけど高村が行きたいなら」
「や、海はいいよ。日焼け苦手だし」
「んじゃ水族館なら涼しいしどう?」
「水族館・・・・・・・」
小学生のころ行ったきりだ。ちょっと魅力的。
「んじゃ水族館で決まりな」
「え?もう決まり?」
「行きたいって顔してた」
指摘されて思わず赤面する。そんな単純に顔に出てましたか、わたし。
けれど思いがけないサッカーくんとの約束に嬉しくなっている自分は確かにいて、頬が緩んだ。

その後しばらくしてサッカーくんは私を家まで送ると言って、一緒に彼の家を出た。
彼の自転車の後ろに乗れと言われ、ちょっとだけ躊躇う。
「安全運転するから、警戒すんな」
苦笑いされて、彼が去年の夏、私を乗せてめちゃくちゃな運転をしたことを彼もちゃんと自覚していて、かつ覚えていたのかと驚いた。
サッカーくん、記憶力が良い。
「お前だって覚えてんだろ。なんで俺だけ記憶力良いって話になんだよ」
緩やかなスピードで夕暮れ時の田舎道を自転車は走る。
「でもほら・・・ナツギのこともさ、覚えててくれて―励ましてくれたでしょ。嬉しかったよ」
高2の春、授業中に英語教師のナツギに異常接近されたことがあった。
高2の終わりごろ、3年の担任がナツギかもしれないと不安がっていた私を、そんなことを話してもいないのにサッカーくんは守ると言ってくれた。
「お前が嫌な思いしてる時にオレは助けることすらしなかったんだぞ。嬉しいとか言うなよ」
「だって私がずっとサッカーくんのこと避けてたのにさ、その間もサッカーくんはいろんなこと心配してくれてたんだもん。
すごく嬉しいよ。それと、ごめんって思ってる。全然サッカーくんのこと、わかってなかった」
「・・・・高村だってなんやかんやオレの心配してくれてただろ。おかげで色んなことが変われた。
中学んときからずっと、大事なところではいつだって高村が助けてくれた」
自転車をこぎながら、サッカーくんは静かに話す。
「高村が一番オレのことわかってくれてる」
「・・・・そう・・・かな。そうだったらいいけど・・・・」
「そうだよ。だから今度はオレが高村のことわかる一番のヤツになりたい」
「・・・・・・・・・・・とっくに、そうだよ」
「え?」
「とっくにそうだって言ってるの」
キキっとブレーキをかけてサッカーくんは自転車を停めて振り向く。
「なんて?いや、聴こえてんだけど、もっかい言って」
「は?なんで?」
「いいから」
「・・・だから。私のこと、サッカーくんが一番分かってるんだと思うよ。私よりも分かってるときあるもん」
「・・・・・・・・・・・・・・ほんとに?」
「うん」
しっかりと頷くと、サッカーくんは何とも言えず嬉しそうに笑った。
あーー・・・・・・・・・・・・その笑顔は、ずるいです。
「高村、顔赤い」
「うるっさいっ!!いーから早くこいでっ」
ばしっと背中をたたいて前を向くように促すと、彼は笑い声をあげて、はいはい、と言いながら自転車を再び漕ぎ始めた。

私とサッカーくんの関係は、ひどくあいまいであやふやで言葉で表現するには難しい。
でもこれが今の私とサッカーくんの自然な距離だと知ってる。



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