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「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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101 最後の年13

夏休みに入ってから平日は毎日学校に通っていた。
サッカーくんとは、特に約束しているわけではないけれど、
講習のある日は勿論、図書館での自主学習でもほぼ毎回顔を合わす。
勿論ほかの同級生たちも結構通っているので全然話さない日もあるけれど
それでも彼はいつもと変わった様子はなかった。

ところが八月に入ってから一週間。
ずっと姿を見せない。
夏風邪をひいたという話をセンセイから聞いたけど、
なんとなくそれだけではないってことを感じていた。




夏休みに入ったら四男くんはあの家を出ていく。

わたしから聞くことでもないから、お見舞いに行った日に知ったこと以外、何も知らない。
四男くんがいつ引っ越してしまうのかさえ、知らないままだった。

けどきっと、もうあの子は行ってしまったんだろう。
サッカーくんの夏風邪もきっとそのことと無関係じゃないだろう。
そっとしておいてあげた方がいい。


学校帰りの電車は思いのほか混んでいた。
運動部の子たちだろう。
駅に着くたび、揃いのユニフォーム姿の子たちの乗り降りで賑わっている。
ホームと反対側の扉の前に立つ私の前に影が差す。
顔を上げると、愛想のいい笑顔を浮かべた男の子がこちらを見下ろしていた。
「?・・・・・・あっ」
「どもっ」
次男くんだった。
前に会ったよりもずいぶん日焼けしていてすぐにわからなかったけど、爽やかを絵に描いたような笑顔はまさしく彼だ。
同じジャージ、同じリュック姿の子たちが数名、傍に立っている。
次男くんは彼らの視線を遮るポジションにさりげなく立つ。
背の高い彼はちょっとした壁だ。向こう側が全然見えなくなった。
「勉強してきたの?」
「うん。夏期講習。次男くんは部活?」
彼はたしかバスケ部。
「うん、練習試合だった」
イエイ、と笑う様子から勝ったようだ。つられて私も笑う。
「サッカーくん、まだ具合良くない?」
「んー、ま、気持ちの問題?風邪もだいぶひどかったんだけどさ。あとは兄貴次第って感じがする」
「・・・そっか・・・・・」
そのあとは何となく言葉が続かなくて、流れる風景をただ見つめていた。

「高村さんって、下の名前、なんてゆーの?」
「え?」
「稜、なに?」
「稜、だけだよ」
「へぇ。男子と間違われない?」
「たまにね」
「稜ちゃんかー。可愛いなぁ」
からかいでもなく、意味深過ぎず、さらりと言ってのけるあたり、サッカーくんと同じ遺伝子持ってるだけのことはある。
一見、素直にまっすぐ育ってきたように見える好青年次男くん。きっと女の子たちは放っておかないだろうなあ。

三男くんは、無愛想バージョンサッカーくんとよく似てるけど、やっぱり整った顔してるし、四男くんは零れ落ちそうな笑顔の持ち主だし。そう言えばお父さんも渋くカッコいい。けど実際は家事が苦手な優しいパパさんで。
きっと、お母さんも素敵な人だったんだろうと思うんだ。
四男くんのお父さんもきっと・・・・・。
だから大丈夫。きっと大丈夫。

私は他人だからそんな風に考えられるけど、サッカーくんにとって、もちろん次男くんも三男くんも、お父さんは殊更に、抱える想いの深さは計り知れないだろう。

「稜ちゃん、このままうち寄ってってよ」
「え?」
「そんなびっくりすること?毎週来てたじゃん?」
そうじゃなくて。
呼び方呼び方!
「え。だって名前聞いたんだし、普通呼ぶじゃん?」
呼ばない!!名前教えてもらったからって呼ばないから、フツー!!
しかし次男くんはむしろ不思議そうな顔をする。
「あ、オレ、良平。『りょう』つながり。なんなら良ちゃんって呼んでよ」
ニコニコニコニコ。
・・・・・・・・・・これは・・・・・・・・確信犯ってやつでは???
めまいがする。
たち悪っ。
これは、サッカーくんの比なんかじゃない。悪質だぁッ!


「兄貴に連絡しとく。喜ぶよ、稜ちゃん来るって分かったら。
あ、でもどうせならいきなり行って驚かすっていうのもおもしろ」
「連絡!すぐ入れて」
「あ、はい」
ポチポチとメールを打つ次男くん。
病気で臥せってるところを突撃とか、悪趣味だこの人。
スマホをいじってる次男くんをため息交じりに見上げる。
こんな距離初めてだから気が付かなかったけど、サッカーくんより次男くんのほうが背が高い。

きっと四男くんだっていつか大きくなる日が来る。

「あ、ごめん稜ちゃん。買い物付き合ってもらっていい?飯当番なんだった」
「うん、いいよ。お見舞いも買っていきたいし」
「駅前にできたケーキ屋、美味しいらしいよ。見てこっか」
「うん」

サッカーくん、プリンなら食べてくれるかな。
そんなことを考えながら、電車に揺られる。

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