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「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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97 最後の年9


次男くんの言葉があまりに衝撃すぎて思わず手にしていた餃子をポロリとテーブルに落とした。
それを次男くんはなんてことは無いという風に拾って、出来上がりを並べたお皿にきれいに置いた。
「親父には身に覚えのない妊娠だからすぐにばれて、
それ精算させるために引っ越してきたんだよ、俺たち。
当時はそんなことわかんなかったけどさ、
両親の様子は明らかにおかしかったから子供心になんかあるってことはわかったよ。
でもそれに触れちゃ絶対ダメだって思ってたからさ。知らん顔してたんだけど」

小4の時。
女の子たちを騒がせた都会からやってきたイケメン転校生・サッカーくんは
こんなつらい理由を抱えていた。



サッカーくんたちは子供心に四男くんの誕生と両親の不和とがなにやら関係してるらしいと直感的に感じ取っていたけれど、それを口にしないようにしてきた。だけど、そういう空気は次第に家の中を包み込んでいってしまう。
自然家に向かう足は遅く、三人とも遅くまで外をぶらぶらしていたそうだ。

なんとなく思い当たることがあった。
サッカーくんと学校を早退して町のコロッケ屋さんに行った時。
出会った年配の人たちは皆、サッカーくんを咎めたりしなかった。
優しい人たちばかりだったから、あの時はそんなに気にも留めなかったけれど
実際、サッカーくんがああいう時間にうろついていること自体珍しくなかったということだったんだ。
あのころのサッカーくんは、問題行動など起こしてなくていつだって友達に囲まれていたのに。

けれどその年の夏。
サッカーくんのお母さんが四男くんの父親である人のところに行ってしまった。
「引っ越したところでさ、結局切れてなかったんだ。それで親父も諦めついたみたいでさ、離婚した」
それならそれでもう別にいいと、次男くんは思っていたそうだ。
サッカーくんも同じ考えだったらしい。小さく頷いていた。
「ま、あのころは俺らもなんか荒んでたけどさ。特に兄貴な」
クックッと次男くんが笑うとサッカーくんはむすっとする。
「うるせーな」
「兄貴が機嫌悪いと四男も落ち着かなくなるからさ、三男は我関せずだし、家ン中空気悪いじゃん?
どんだけ俺が気を遣ったか。毎日毎日飯必死に作ったんだぜ?親父も三男もおかしなもんしか作れないしさ」
「アハハ、えらいね。すごいよ次男くん」
話してる間も手を休めることは無い。主夫の鏡だ。
「次男、お前、べらべらしゃべり過ぎ」
「いいじゃん、こういう話できる相手なんてそうそういないんだぞ?今日は吐き出させてもらう」
「そんな話聞かされたら高村が気を遣うだろ?」
「平気だよ、サッカーくん。聞くしかできないけどそれでいいなら何でも聞くよ」
ほらね、ってどや顔で次男くんはサッカーくんを見る。
「・・・・・勝手にしろ」
怒ってるというよりは諦めたって顔だ。それでいて表情はどこか優しい。
次男くんの苦労をちゃんとホントはわかってるから。

「親父はさ、四男のことはすっげー可愛がってて成人するまで自分が育て上げるって決めてんだよ。
なのに兄貴は就職するの一点張りでさ、第一希望だったK高もとっくに諦めて成績どんどん落とすしよ、今の高校にスレスレで入れたから良かったけどさ、ひやひやしたわ、俺。そんなだったくせして、いつの間にか進学希望とかしちゃってるし、成績ガンガンあげてるし、なんだよって感じでさ」
そう話す次男くんは、すごく嬉しそうだ。
サッカーくんはばつ悪そうにそっぽ向いてるけど。
こうしてる姿を見てるだけでわかる。ほんとにほんとにこの家のみんな、仲が良いって。
大事な、家族なんだって。

「けどさ。半年くらい前にさ。四男の親が突然やってきたんだ」
四男を引き取らせてほしいと、頼みに来た。
「何をいまさら言ってんだ、って思ったよ。三男なんかブチギレちゃうし、ほんと参った」
アハハ、と次男くんは笑う。乾いた笑いだった。
「なにがあっても絶対四男は俺らが育てるって決めてたんだ。
四男だけいつまでもチビなんだよ。俺らがあの年のころはクラスで一番デカくてさ。
なのにあいつは一番チビなんだよ。
あいつはいつもそれ気にしてて、絶対俺ら抜いてやるって息巻いててさ。
・・・・・やってきたあいつの父親、すげーチビで。
なんでこんなチビが良かったんだろって思ったよ。
だけど。
顔とかさ、俺らの誰よりも、四男によく似てた。
いや、この場合、四男が似てんだけどさ。
そいつが、玄関で土下座して頼むんだよ。四男を育てさせてくれって。
笑うよね、土下座だぞ?親父だけじゃない、俺らにまで頭下げんだよ。
するか?普通。大の大人が。プライド無いにもほどがあるじゃん??」
もう一度次男くんは笑う。笑えていないけど笑おうとする。
サッカーくんたちが大事に大事に育ててきた四男くんによく似た男の人の存在は、どれほどに残酷な現実だっただろう。
四男くんによく似たその人に、玄関先でそんな風に懇願されて、どうして、嫌だと言えるだろうか。
こんなに優しい人たちに。
「戸籍じゃ、四男は俺らとなんにも変わんないんだよ。うちの四男なんだよ。
あっちに行けば養子になるんだぞ?血、繋がってんかなんか知らねえけど、これまで一緒に暮らしてきたのは俺らなんだ」
四男くんの置かれた状況の理不尽さを次男くんは怒ってくれる。
だけど四男くんがお母さんの所へ行くことを、きっと全員で決めたんだろう。
それが一番いい答えだと。
「別に、遠くに行くわけじゃない。四男が望むならいつでも会えるんだ。
俺らが兄弟なのは変わりないって親父も、あの人たちも言ってただろ」
サッカーくんにとって遠い存在になってしまった、彼の母親。
胸が、痛い。

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