☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


96 最後の年8


サッカーくんちがやっぱり父子家庭だったこと。
夏休みにお母さんが四男くんだけを引き取ること。

突然知ることになったサッカーくんちの事情に正直どう反応していいかわからない。
とりあえず聞かなかったことにしよう。
四男くんが言わなければサッカーくんは私の耳に入れるつもりはなかったはずだ。


そのあとは当り障りのない話題で時間が過ぎた。
昼を回るとサッカーくんのお父さんと三男くんがやってきた。
次男くんは部活でどうしても来られなかったらしい。
「じゃあおれらは帰るから。夕飯作っとく」
立ち上がるサッカーくん。
まだここに来てそれほど時間は経っていない。
だけどあんなことになった私に気を遣ってくれてるんだとわかるから、その言葉に従うことにした。
「高村さん今日はわざわざありがとうね。お見舞いまでいただいて」
「いいえ、四男くんが元気そうで良かったです」
「またね高村さんっ!!」
「うん、また遊ぼうね!」

病棟からエレベーターに乗ると、サッカーくんはふうとため息をついた。
「なんかごめんな。変な話聞かせて」
「ううん。聞かなかったことにするから気にしないで」
「・・・オレは平気だから、あんま気にするなよ?」
嘘だ。
平気なわけなんて、ありえない。
「・・・うん」
だけど他人がたやすく触れていい話じゃない。

帰りの電車はなんとなくお互いに無口になっていた。
今日はあまりにもいろんなことがありすぎて少し頭の中が混乱してる。
途中、窓の外の風景が雨模様に変わっていく様子をぼんやりと見つめていた。
その隣でサッカーくんが珍しく携帯をいじっている。メールが来たようだ。
携帯画面を見つめたままサッカーくんは固まる。
「・・・・高村・・・・、餃子ってどう作んの?作ったことある?」
「へ?うん、何回か作ったことあるけど」
「三男のやつが餃子作れって言ってきやがった。作ったことねーっつーの」
それでも、できないって断らないところがサッカーくんらしい。
彼は優しくて真面目で家族思いのお兄ちゃんだ。
「大丈夫、簡単だよ。良かったらこれから一緒に作る?説明するよりそのほうがわかりやすいでしょ?」
「え。でもそこまで高村に甘えるわけには・・・・」
「だって家族分でしょ?大量だよ?一人じゃ大変だよ?今日は結局迷惑かけてばっかだったし挽回させて!」
「マジでいいの?すげぇ助かる。ありがとう」
スーパーで材料を買いこんでバスを待っていると、部活帰りの次男くんと偶然出くわした。
「なに、その荷物。え、家で餃子作るの?マジ?面白そうじゃん」
貴重な戦力確保。
男所帯の割に綺麗なキッチン。道具もわかりやすい。几帳面な一家らしい。
「整理整頓は親父の担当。作るのは俺たちの担当だよ。弁当も毎朝俺ら二人で作ってんだ」
「すごーい」
次男くんはテキパキと準備をしながら話してくれる。こんなに話すの初めてだ。
料理ができるのはサッカーくんと次男くん。三男くんはお父さんに似て壊滅的らしい。
四男くんは配膳担当。可愛いウェイターさんだ。
あれ?三男くんは結局なに担当???

「はい、高村さんはこれ使って」
手渡されたエプロンを受け取る。
「ありがとう。ン?これ、四男くんのっ?!ちっさすぎっ!!」
「アハハ、さすがに無理かぁ」
次男くんの悪戯にサッカーくんも一緒になって爆笑してる。
「案外似合うんじゃねえ?イテッ!」
サッカーくんの背中を一発叩いて別のエプロンをひったくる。
「たくさん作るから、二人ともしっかり働いてねっ!」
「「おう」」
野菜を切り刻んで水分を絞り落として、ひき肉とこね合わせて・・・・。
今日はいつもの倍量で作ってるから、かなりの重労働だ。
だけどでっかい男の子二人がやたら楽しげにこねこねしている姿はなんかこう、ほほえましいものがある。
週末ちょっと顔を合わす程度の弟くんたちはクールに見えていたけれど、
こうして次男くんを見てるとやっぱり普通の男の子だ。
きっと三男くんもこんな感じなんだろう。四男くんも含めてすごく仲が良いんだろう。
なのに四男くんだけがこの家からいなくなっちゃうんだ・・・・・。
嘘みたいだ。だけど、嘘じゃない。
胸の奥がきりきりと痛む。
どうしていつもこんなことばかりになるんだろう。
私が好きな人たちは、みんな遠ざかってしまう。
私はまるで疫病神だ。
いつも悪いことばかりだって思ってたけど、ホントは私が呼び寄せてるんじゃないの?
そんな風に考えてしまう。

「高村ぁ、次、どうすんの?」
「あ、次は、皮に包むの」
見本に1つ作ると、二人そろって「おぉ―」と口も目も丸くする。
・・・・・う、可愛い。
「よ、欲張ってたくさん入れるとうまく包めないからね?」
「うん、わかった。ほら、やるぞ!」
「おう」
食卓を作業台代わりにしてとにかくひたすら数を作る。
サッカー兄弟、器用だ。さすが主夫。
作業中の雑談はいつの間にか四男くんのことになった。
「あいつがベラベラ話すから、高村、あいつがここ出てくの知ってる」
「え、兄貴、話してなかったんだ?」
「・・・・・・こんな話、聞いて楽しいことじゃないだろ」
「高村さん、何であいつだけって思わなかった?」
「え・・・・。あ・・・四男くんはまだ小さいから??」
「そうだよね。あいつだけ歳が離れてるだろ」
サッカーくんとは11歳、次男くんとは9歳、三男くんと7歳違う。
四男くんだけが歳がやたら離れている。
でも、そんなの、別段珍しいことじゃない。
「女の子がどうしても欲しかったとか?」
よく聞く話だ。
「そうかもしれないね」
次男くんの言い方は、それだけじゃないって言ってるように聞こえた。
胸がドキドキする。嫌な予感が溢れてくる。
「あいつだけ父親が違うんだ。母親の浮気相手の子供」
ガツンと頭を殴られたような衝撃が走った。
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