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「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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93 最後の年5


「なんも聞こえなかった?」
向かいの席から私の顔を覗き込んで尋ねるサッカーくんに頷いて返す。
「ほんとに聞いてない?」
もう一度こくんと頷く。
「んー・・・そっか」
ふう、と安堵とも疲労感ともつかないため息とともにサッカーくんは背もたれにどっともたれて小さく笑う。
「聞いてくれた方が良かったのにな」
思いがけない彼のつぶやきに目を見張る。
「いや、ま、いつもお前とはこんなだよな。なんか、大事な時にすれ違う。いや、オレが卑怯なだけだけど」
自嘲気味な笑みを浮かべてサッカーくんはぼそぼそと話す。
「ちっとも昔と変われねえや、そーゆーとこ」
なんて言ったら良いのか、わからなくて。
私は黙ってただ彼を見つめていた。


彼がいったい何を話すつもりなのか、少し緊張する。
昔の話は、あまり・・・・したくない。
言葉に出したら、なにかがまた変わってしまいそうな気がして。
サッカーくんは卑怯なんかじゃないよ、と言いたいけれど、
それを口にすればもうその先に続く話を避けることができなくなるから。
それが怖くて、黙り込む私は・・・・。
卑怯なのは、私の方だ。


「なあ高村」
静かに呼びかけられて、彼と視線が合う。
ほんの数秒のことがとてもとても長く感じられる。
サッカーくんは穏やかな視線をまっすぐに向けてくる。
私は・・・今いったいどんな顔をしてるんだろうか。

「帰ろっか」
カタリ、と彼の椅子が音を立てた。
立ち上がったサッカーくんはその場を離れて荷物を自分の分と私の分とまとめて持ってくる。
「ほら、行くぞ」
「あ・・・うん」
拍子抜けしたものの、どこかほっとしてる自分もいた。


それからいつもの日常が過ぎて行き、気が付けばもう季節はいよいよ夏。
沢井さんから、一回忌の連絡をもらった。
須藤さんと、奏さんのお友達が数名、ささやかに行うという。
「稜ちゃんはどうする?無理はしなくていいぞ」
「行く」
「平気か?」
「うん」
「わかった。じゃあ須藤さんに伝えておくよ」
「ん、お願いします」

あれからもう一年が経とうとしてる。
机に置いた写真立には、奏さんが持っていた写真を入れている。
らしくないことしてるな、と思いつつ。
一回忌だって。
なんだか変なの。
奏さんは、ここにいるのに。
どこにもいない。


金曜日。
学校でサッカーくんと顔を合わすなり、彼は明日の勉強会をキャンセルしたいと言ってきた。
なんと、四男くんが怪我をして入院したという。
「大したことは無いんだけどな」
「大したことないことないよ!大丈夫??」
「いや、ほんと、大したことないんだ。ただ病院が遠すぎてさ」
四男くんは、社会科見学の最中に階段を踏み外して近くの病院に運ばれてそのまま入院になった。
強打した肩と足の骨にひびが入ったそうだ。手術はしなくていいもののしばらく入院になるそうだ。
「う、可哀想に・・・・。四男くんも一人で遠い病院じゃ寂しいよね。怪我だって痛いだろうし・・・・」
四男くんはまだ小1だ。
次男くん三男くんは結構クールなんだけど四男くんはすっごく可愛いのだ。
大柄揃いのサッカーくんちで唯一ちびっこの四男くんは、その分有り余るほどに元気で人懐っこくて甘えん坊だ。
男所帯のサッカーくんちは四男くんの存在が大きい。
みんなに可愛がられているのがはたから見ててもよくわかる。
サッカーくんちに行くことに抵抗がないのは、四男くんがいてくれるから。
たまに勉強の邪魔をし過ぎてサッカーくんに本気で叱られてしょげてるけど、それすらほほえましい光景だ。

「ねえ、何かお手伝いできることないかな?」
「え」
「いつも四男くん、私が行くたび遊んでくれるしさ。何か私も手伝いたい」
「あー、じゃあさ。見舞い、行ってやってもらえたりする?」
「行っていいの??邪魔にならない?」
「あいつ、高村に懐いてるから。すごく助かる」
「えーっ、ほんと?いいのっ?私も嬉しいっ。じゃあ、明日は勉強会じゃなくてお見舞いに変更だね」
「ほんとに良いのか?」
「私が行きたいの」
だって四男くん、可愛いんだもーん。
「あ、でも、それお手伝いになってないよ?」
「あいつの相手してもらえるだけでじゅうぶんだって。じゃあ明日、悪いけど付き合って」
「うん。あ、病院、どこ?」
「○○○大学病院。遠いだろ、悪いな」
「・・・・・・・・・・・・あ、ううん。全然」
慌てて笑顔で答える。

○○○大学病院。
奏さんの、いたとこだ。

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