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89 最後の年1


新学期が始まったその日、珍しく沢井さんの方から電話がかかってきた。
「面白い話が聞けそうな予感がしたからさ」
「・・・・・そーですか」
受話器の向こうの沢井さんにあっかんべーをする。
けれど沢井さんの勘は正しい。
正しすぎて憎たらしい。



一学期初めの作業と言えば、まずは貼り出されたクラス名簿で自分の名前を探すこと。
とはいえ、三年の特進クラスはおおむね事前に個人に通達されているので
名前の確認をするだけなんだけど、悲しいことに三年の特進クラスはどういうわけか
一般教室とは別棟、特別教室棟に配置されている。
孤独だ。
すっごく孤独だ。
三年生用の昇降口を入って特進クラスだけ特別棟方向へ。
これって、要するに選択授業での教室移動さえ惜しまれるってこと?
ああ、でも、一般教室棟のざわざわは、こっちにもかすかに聞こえてくるくらいだから
これで正解かも。
静かで落ち着く。
昇降口から渡り廊下を歩いていると、目の前の階段の上から見覚えのある顔が愛想よく笑っていた。
「稜ちゃん先輩!」
聞き慣れない呼び名に一瞬固まる。
「・・・なに、その呼び方」
「俺!先輩の上の教室――――!!」
こっちの質問を完全に無視して、満面の笑み。
「すっげーよろしくっ」
返す言葉が見つからず、愛想笑いで手を振ってやり過ごす。
・・・・田沼くん、二年の特進か。
二年生、クラスが多いんだったっけ。

教室に一歩入れば、ほぼ前年度と同じ顔ぶれがそろってて、
その中に何人かは初めての子もちらほら。
挨拶を交わしながら、自分の席を見つけて座ろうとして気が付く。
前の席にナル君。隣の席にサッカーくん。
サッカーくんの前の席はせいちゃんで、その隣が水島君。
案外出席番号が近かったんだね、みんな。
「まだ来てないけど富山は、お前の後ろな」
「・・・・濃いね」
「濃いとかいうな」
残念ながら園ちゃんだけが遠い席。
仕方ないけどね。
こちらを振り返る園ちゃんに手を振って席に着く。
けど、やっぱり濃い、この周辺。
「担任、誰か知ってる???」
みんな首を横に振る。
うちの学校は、無駄に茶目っ気を出すというか、
担任が教室に現れるまで分からないように伏せられている。
おかげさまで、いつも一学期始業式の朝は無駄にワクワクドキドキ感を醸し出してくれる。


「野々宮先生だったんだろ」
受話器向こうで沢井さんはニヤニヤしているに決まってる。
「なんでそう思うの」
「キミの声を聞いていれば分かる。イライラしてるようで嬉しそうだ」
「・・・・・・・」
「で?正解?」
「・・・・・・正解です」

教室に現れたのは、野々宮先生だった。
そうであったらいいなという期待と、でもそうはならないだろうという諦めの気持ちでいっぱいだった教室の空気は一変に和んだ。
先生は頭を掻いて困ってたのは去年と同じ光景で。

「結局渡辺先生に押し切られたんだな」
「センセイの話だとそうみたい」
やたら困ってどこかやっぱりイヤそうで、けど引き受けたからには精いっぱいやるからな、というセンセイの話は
去年と似たり寄ったりだったけれど、先生の表情は去年よりもずっと真剣だった。
自分が三年の特進クラスを受け持つという選択肢はないと言い切ったセンセイが
どんな思いで今朝ここに立っているのか、それを思うとちょっと複雑な思いがする。
嬉しいんだけど、複雑だ。
「キミの意見が採用されたわけだ」
沢井さんはここでもつついてほしくないところをつついてくる。
「そんな簡単に決めないでしょ?」
たかが一生徒の意向を取り上げるなんて無謀、渡辺先生がするわけない。
だけど余計なことを言ったんじゃないかと後ろめたい気持ちになっているのも本当で。
それは気にし過ぎだと、帰り道にサッカーくんにも言われたけれど。
でもなぁ・・・・・気にするよ、それは。
「きっかけがキミであったとしても、やり手の渡辺先生にクラスを任せられると判断されたってことだろ。
野々宮先生は優秀なんだな。見た目と違って」
沢井さんは一度、野々宮先生と会って言葉を交わしている。
「失礼な言い方」
「アハハ、そりゃ失礼」
「・・・・・・」
とんでもなく失礼な人だ、沢井さん。
「けど良かったじゃないか。キミの数少ない友達が全員近くに揃ったんだし」
「・・・えぇ、えぇ、その通りです」
的を得てるのが余計腹立つ。
「これで思い煩ってたことは全部解消したんだ。
思い切り勉学に打ち込める環境になって良かったじゃないか」
これも沢井さんの言う通り。
頭の片隅にずっと残ってたモヤモヤは綺麗に一番嬉しい形で落ち着いた。
朝一枠に放課後二枠の特別授業も明日からさっそく始まる。
もうほんとに勉強漬けの毎日になる。
「なあ、稜ちゃん。一年なんてあっという間だからさ、楽しめよ」
「楽しめるなら楽しみたいけどさ、余裕ないよ」
「余裕ないなんて今から言ってたら受からない」
「そんなこと言われても、ホント余裕ないんだってば」
「時間は作るもんだ。頑張れよ。次も面白い話をよろしく」
好きなことを好きなだけ話して、沢井さんは電話を切った。

面白い話を期待されても困るんだけど。

特別授業用の分厚いテキストたちを横目に見ながら深いため息をついた。




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