☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


84 まっさらな気持ち5

泣いて泣いて、それこそ頭が痛くなるくらいに泣いて。
どれくらいの時間が経っただろう。

ようやく冷静さが戻ってくる。

目の前にある、奏さんからの最後の贈り物にもう一度手を伸ばす。
もう二度と見ることは無いと思ってた奏さんの優しい笑顔。
そのすぐ隣で私も笑ってる。


「・・・・・・・サッカーくん」
まだスンスンとなる鼻をすすりながら呼びかけると、
律儀に背中をこちらに向けたままで、
それとわかる程度に首をわずかに動かしてサッカーくんは頷いて返す。
「もぉ平気。帰ろ?」
「・・・・・別にオレは急がねえぞ」
ぶっきらぼうだけど優しさを含んだ彼の声色に、自然に笑みが浮かぶ。
ああ、今、彼が傍にいてくれて良かった。
「ありがと、でもほんと平気だよ」
ほんの少しの間があってサッカーくんは立ち上がり、
「靴箱んとこにいるから、慌てずに来いよ」
やっぱり振り返ることなく鞄を持つと教室を出ていく。

一人になった教室は静かだったけれど寂しくはなかった。
鼻をかんで、それから一度手洗い場に出て顔を洗い、身なりを整えて
本を元あったように包み直し鞄に仕舞い、急いでサッカーくんの待つ昇降口に向かう。

サッカーくんはなぜかちょっと苦笑いして、
それから私の鞄を取り上げると、とっとと歩き出した。
「え?え?なんで?」
彼を追っかけて鞄を持とうとするけれど、ひょいと避けられる。
「重たいだろ」
「でも悪いよっ。それになんか手ぶらだと落ち着かないしっ」
「んじゃ、これでいいだろ」
サッカーくんの右手が私の左手を握る。
「・・・・・・・・・・え・・・・・・」
少し強めに握られた手は、ぐいぐいと私を引っ張る。
転ばないようにそれに必死について行く。
セーターの袖で半分隠れてる私の手を握るサッカーくんの手は
ほどくことを許さないみたいに痛いくらいにぎゅって握ってて。
それなのに彼の横顔はどこか上機嫌にも見えて。
だからなにも聞けなくなってしまう。


彼の歩調は少し速い。
ついて行くのに精一杯になって、気が付けば駅を通り越していた。
「あ、あの?」
「・・・・・・・」
サッカーくんは知らん顔で線路沿いの道を歩く。
彼の歩調が不意に緩み、強く握っていた手の力もそれと同時にゆるんだから
じゃあと手をほどこうとしたら、またぎゅっと摑まえられる。
「えーなんでー?」
「・・・・・・」
無視。
なんでなんだぁ!!

でもやっぱり、なんだか、サッカーくんは機嫌がいい。
きっとこの道はサッカーくんのお気に入りなのかも。

しばらく行くうちに息もようやく整ってきて、私はもう一度口を開く。
「ここ、どこに繋がってるの?」
「なんだ、知らないのか?」
返事キタ!
どうやら話す気になってくれたらしいサッカーくんが軽く驚いた様子でこちらを見る。
「うん。初めて歩くし」
「三つ先の駅まで行ける」
「え!!そんな先まで??」
「途中、道とは言い難い悪路になってるけどな」
ということは行ったことあるんだ!すごいな。
「・・・・・待って!私、そんな距離歩ける自信ないよっ?」
サッカーくんはおかしそうに笑った。
「バーカ。いくらなんでも女にそんなことさせるわけね―じゃん」
その言葉にピンときた私は思ったままを口にする。
「だよね?ビックリしたっ。彼女さん、ああ見えて実はものすごい健脚なのかと思ったよ!!」
そうだ。思い出した。
前にも、サッカーくんが彼女さんと一緒に歩いてるのを見かけたから、
この道が彼のお気に入りなんじゃないかと思ったんだ。
一人でうんうんと納得していると、
「・・・・なんの話?」
ちょっと冷えた声が問う。
「え?ほ、ほら!商業高校の制服のすっごく綺麗な人!サッカーくんを駅で待ってた人だよ?」
咎めるような彼の視線に戸惑いつつ慌てて答えたものの、
サッカーくんは無言のままで、憮然とした表情を浮かべ歩き続ける。
「・・・」
あー・・・・なんかよくわかんないけど、話題ミスったっぽい?
一気に不機嫌顔じゃんか、サッカーくん。

「・・・・・・・彼女じゃない」
「へ?」
「あれは・・・・・・・・知り合いの彼女」
「あ!そうなんだっ?ごめん、勘違いしてたねっ!!」
慌てて笑ってみるけれど、あれ?と疑問が湧き上がる。
「でもお揃いのストラップつけてたよね?」

ピタリ。

サッカーくんの足が止まる。


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