☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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83 まっさらな気持ち4


それからの日々は、平穏で。
学年末テストが終わり、
残すのは卒業式と終業式くらい。
結果はともかく、テストが終わった気楽さで教室内はけだるいくらいの
穏やかさと賑やかさに満ちている。

その間にも3年生の受験結果が毎日職員室前に貼り出されていく。

職員室を通るたび、私はそれを見上げていた。


「なかなかなもんだろ、今年の三年生は」
職員室に戻ってきたらしい野々宮先生が自分のことのように嬉しそうに笑っている。
「次はお前らだな」
「・・・・・・・うん」
「なんだなんだ。元気ないな?」
「・・・・センセイ、春休みって学校開いてない?」
「あー、入試やら入学やらの準備があるからな。入れない期間があるにはあるが
それ以外は大丈夫だぞ。また予定がわかれば知らせる」
「はい、ありがとうございます」
「なんだ、行き詰ってんのか」
「んー・・・・・・・そーゆーわけでもないけど・・・・」
要するにただ、不安だった。
思えば高校入試前からずっと、私の傍には奏さん(沢井さんも)がいて、
分からないところがあれば、いつでも気楽に教えてもらえた。
一人でただひたすら勉強するのは嫌いじゃないけど、たまにすごく不安になる。
独り、であることに。

野々宮先生は帰りのHR時に、春休み期間の図書館の開放日を記したプリントを配った。
仕事早い。
そして図書館、思ったよりも開いてる日が多い。
「この時期、職員室はいろいろ立て込んでるから、必ず入る前にノックして用事を先に伝えろよ。
間違ってもいきなりドアを開けたりするな。いいな?」
「はーい」


プリントを鞄に仕舞って帰り支度をしていると、珍しくサッカーくんが私の席の前にやってきた。
教室で彼と話すことも増えたけれど、改まって彼が私の傍にやってくるなんて事は今までなかったことで
教室を出かかっていた何人かの女子がこちらを振り返って何事かとじっと見てる。
・・・・・相変わらずモテてるなぁ、サッカーくん。
「ちょっと話あんだけど、このあと残れる?」
彼から私に話なんて、ホントに珍しい。
「うん、大丈夫」
わざわざ教室に残ってってことは、あまり周りに聞かれたくないことなんだろう。
「ここで大丈夫?」
「あー、うん、大丈夫」
なんだか、歯切れが悪い。
いつものサッカーくんらしくない。

サッカーくんは誰もいなくなるのを待って、教室のドアを二つとも閉じるという警戒ぶりを見せ、
それから自分の机の中から紙包みを取り出し、
ようやく隣の椅子を持ってきて腰かけるとそれを私の机に置いた。
「・・・・なに?これ?」
「沢井って人から預かった」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
意外な名前が、意外な人から告げられて呆気にとられる。
「この間駅で声をかけられた。・・・多分、高村を待ってたんだと思うけど。
それ、お前に渡しといてくれって一方的に押し付けられた」
なんで、沢井さんが?
「なんか言ってた?」
「いや、それ渡しといてってホントそれだけ言って帰ってった」
「・・・・・・」
マジマジと机の上の紙包みを見つめる。

沢井さんとは、奏さんの葬儀以来、会っていない。
連絡も取ってない。
すどうさんから電話をもらった時に、相談しようか少しだけ迷って、止めた。
沢井さんとも、すどうさんとも、会うことはもうない。

手を伸ばそうともしない私をサッカーくんは怪訝そうに見つめて、
「なんとなく、本っぽい」
そう教えてくれた。
本・・・・・・?
まさか参考書とかを嫌がらせ的に・・・・・・??
いやいや、いくら何でも沢井さんもそんな暇じゃないだろう。
そもそも、変則的な大きさだ。

頭の片隅に、わずかな可能性を秘めた本が浮かんだ。
紙包みを慎重に開けてみる。
「・・・・・・・・・あぁ・・・・」
現れたのは、月の写真集。
奏さんと初めて一緒に行った本屋で、一緒に見た本だ。
なんで沢井さんからこれが?
いろんな疑問が頭の中に渦巻いたまま表紙をめくる。
そこには便せんが一枚挟まれていた。

『須藤さんから預かった。
きっとキミと奏介にかかわる本だと思うと仰っていたよ。
キミが辛くないのなら持っていてやってほしいと俺も思う。

キミが幸せであることを願ってる。
いつでも遠慮せずに頼ってくれ。

受験、頑張って。応援してる。 沢井』


短い、文だった。
いったいどういう経緯でこの本が私の手元に来たのか、
本当のところはわからない。
奏さんがいつこの本を手にしていたのか、それもわからない。
だけど。

中表紙をめくると。
一枚の写真が挟まれていた。

元気だったころの奏さんと私が映っている。
奏さんの携帯で撮った写真だ。
覚えてる。

「・・・・・っ・・・・・」

いつの間に、こんな写真を奏さんは・・・・・。

涙が、とめどなく溢れてどうしようもなくなって、
必死にこらえようとしても、できなくて。

「・・・泣きたいだけ泣けよ」
背を向けるサッカーくんの気遣いに涙はさらに溢れて。

私は思い切り泣いた。



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