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「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


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81 まっさらな気持ち2


ともかく、無事に三者懇談は終わった。
あれから親とも話し合って、やはり塾はいかないことにした。
行かずにどれだけのことができるかわからないけれど
それでも、先生たちがバックアップしてくれる心強さと
なにより、いまさら新しい人間関係を抱えるという作業は
私には負担になるだけと両親は考えていたようだった。

私自身もそう思っていたことだ。

夏以降、学校にはちゃんと行けている。
それでも、たまにどうしようもない虚しさに襲われるときがある。

奏さんとの約束だけが、今の私の支えだった。


自分がダメなことはわかってる。
だから、今は受験だけを考えて、結果を出して、
それでようやく私の人生の再スタートになるんだろう。

そこに何が待ってるかわからないけれど。


クラス日誌を抱えて冷たい風の吹く渡り廊下に出る手前で、
背後から重量感のある足音が聞こえてきた。
「渡辺先生。こんにちは」
「おうおう、キミか。頑張っとるか!!」
バシバシっと重たい掌が背中をたたく。
「は、はい!がんばってますっ」
「よろしい!ああそうだ、キミな、次の担任は誰がいい?」
「え…担任、ですか?」
「そうだ。担任だ。特進クラスのな。やはり英語の先生とかがいいのか?それとも数学?
ああ、わしは進路指導部で忙しいから担任は持たんぞ。どうだ、誰か良いのがいるか?」
渡辺先生はご機嫌らしく、終始笑顔で勢いよく畳みかけてくる。
「私は、野々宮先生が良いです!」
「うむ、その理由は?」
「野々宮先生にはいろんな相談がしやすくて、そしていつもどんな質問にも真摯に答えてくださいます。
厳しいことも遠慮なしに言われますが、けどそれがセンセイの優しいところだと思います。
先生が担任だとすごく安心するんです!」
「そうか。安心か」
「はい。クラスのみんなからの信頼も厚いです!」
「そうか、野々宮先生は頑張ったんだなぁ。よしわかったぞ。じゃあ勉強頑張りなさい」
「はいっ」
先生の勢いに乗せられる形であっという間のやり取りだったけれど、言いたいことが言えてなんだかスッとした。

そのあと職員室まで日誌を渡しに行くと、センセイは私の機嫌が良さそうだと、笑っていた。
「最近は、ずいぶん成績が上がってきたようじゃないですか」
すぐそばのデスクから話に割り込んできたのは、ナツギ先生。
「英語も、なにかわからないところがあればいつでも訊きに来なさい」
「はい。ありがとうございます」
あの一件以来、ナツギ先生とはできるだけ話をしないよう、近づかないようにしている。
こうしてどうしても話さなければならないときは、どうしても体が強張る。
それでも今はセンセイが傍にいてくれるから、平気。

「この後は帰るのか?」
「あ、はい。鞄取りに教室に戻ります」
「オレは指導室に行くし、一緒に行くか」
「はい」

一緒に廊下に出る。
「ひゃーさぶ」
「はは。気持ちいいな」

「そういや、あれから親御さんとは話し合ったか」
「うん。家で勉強することにした。あれこれ今から始めるほうが混乱しそうだし」
「そうか。とにかくしっかり基礎をこなせ」
「はい」
教室は暗くて、誰もいなかった。
「・・・・あっという間だったな」
「センセイ?」
「特進だよ。オレがまさか担任なんてやると思わなかった。けど案外早くて楽しい時間だった」
「・・・・・センセイ?」
まるでお別れみたいな言葉に不安になる。
「センセイ?なに?」
先生は少しの間、私の顔をどこか寂しそうにも見える笑顔を浮かべて見下ろす。
「そんな不安そうな顔するな。大丈夫だ。高村はできる子だからな」
そんな冗談を言って、私の頭をポンポンと叩く。
「センセ・・・・、もしかして、いなくなるの?」
やだ。
そんなの絶対やだ。
「それは今の時点じゃわからない。けど、どっちにしろオレは担任じゃなくなる」
「え・・・・・」
「いくらなんでも国語教員が三年特進の担任になることは無いからな。
心配するな。この学校にいる限り、お前のサポートはしてやるよ」
「やだ」
「やだとか言われてもな、オレがどうこうできることじゃないぞ。
まあお前にそう言ってもらえたってことで、この一年の俺をほめてやれそうだがなぁ」
「センセイは、嫌なの?特進の担任はやっぱり辛い?しんどい?」
「辛いっつーか・・・・」
先生は言葉を切る。
「楽じゃないさ。みんながみんな、お前みたいに俺を慕ってくれるやつばっかじゃないしな。
けどいやなんかじゃなかった。オレは、やって良かったって思ってるよ、このクラスの担任」
でも、とセンセイは続ける。
「お前もそうだけど、他の連中も、一番大事な時期なんだ。
オレたち教師もベストを尽くさなきゃならない。
そのベストの中に、オレが特進を続けるという選択肢はない。
卑下してるんじゃないぞ。それは絶対に違う。
この先の一年間、お前にとって正念場だろ。オレはお前に受かってほしい。
そのために必要なのは、オレじゃない」

私は何も考えなしに、さっき渡辺先生に野々宮先生が良いなんて言ったけれど
そんな簡単なものじゃないんだ、ってセンセイに現実を突きつけられたことにショックを受けた。

「・・ギ・・でも・・・・?」
「ん?」
「ナツギ先生でも?
ナツギ先生が担任になっても、それでも私のためになる??」
「・・・・・・なる」
「っ」
「悔しいけど、教師としての力は俺よりずっと上だ」
「だけど人として、私はあの人はやだっ!!」
あの時のことは、今思い出すだけでも、すごく苦痛だ。
思い出しただけで、気持ち悪くなる。
悪寒が全身を走る。
身をすくめそうになる私の腕を、先生がぐっと強くつかんだ。
「高村。教師をあの人だなんて言ってはだめだ」
厳しい目が私をまっすぐ見てくる。
「世の中にはいろんな人がいる。けどそれを嫌いだから苦手だからって全部避けることなんてできないんだぞ。
強くならなきゃだめだ。高村。
忘れるのは難しいだろうけど、それでも、いつまでも囚われていたら、ダメだ。
ダメなんだよ」
「センセ・・・・・・・」
「心配いらない」
センセイは優しく笑う。私の腕を掴んでいたセンセイの手の力がすっと抜けた。
「あんなこと、もう二度とさせない。高村はオレの大事な生徒だからな。
担任じゃなくなっても、それはずっと変わらない。
だから。
泣くな、こんなことで」

「泣いてないっ」
「はいはい」

先生の指が、目尻をぬぐう。

「うー・・・・」
そんなことされたら余計に泣けるのにっ。
「ま、あとひと月、担任だからな。できる限り厳しく課題を出してやるよ。楽しみにしとけ」
「うううー・・・・センセイのバカ」
「担任をバカ呼ばわりするのもダメだからな?
お?おーい、サッカー!ちょうどいいところに来た」
出てきた名前にぎょっとして顔を上げると、廊下にはサッカーくんの姿。
目が合うと、ぎょっとされた。

「今から帰るんだろ。こいつも一緒に連れ帰ってやってくれ」
「・・・・なにしてんすか」
「説教だよ説教」
笑う先生に、それを睨む私。
「・・・・帰るぞ高村」
「・・・・・う、はい」
「気を付けて帰れよー」

先生はまるで何もなかったように笑って私たちを見送った。

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