☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


67 結ぶ刻-とき-4


翌日。
夏期講習の時間よりもずっと早い電車で登校した。

あまり、ううん、ほとんど・・・眠れなかった。

奏さんのことが頭の中をぐるぐる回って。
ちゃんとお別れしてきたはずなのに、
もう二度と彼に会えないという事実はどうしたって辛い。
いつかは、越えなきゃならない壁だとわかっているけれど。


夏休みで、いつもよりさらに人のいない電車の中。
私はけだるい体をシートに預けて、ぼんやりと流れていく風景を見つめた。


サッカーくんと会って話して、少しだけ昔に戻ったような気がして。
それが余計に、奏さんの不在をいやというほど、意識させられる。

昨日の、お葬式の帰り道。
沢井さんから聞かされた話。

奏さんは、ずっとずっとサッカーくんの存在を気にし続けてきたって。
元気だったころからずっと、私のために一番いいことは何かって、
そればっかり考えてくれた奏さん。
私との関係をためらい続けた一番の理由は彼の存在だったって。

私が奏さんへの想いをはっきり自覚したあの冬の日の朝。
あの時、あの場所に、サッカーくんがいたんだって。
私に声をかけようとしてたように見えたって。
けれど私は奏さんの姿を見つけて、彼のもとに駆けて行った。
あの時、とっくに奏さんは私のことを好きになってくれていたことを
昨日ようやく知った。

「あの頃にはもう奏介はどうにもならないくらいにキミのことが好きで、
本当はキミから電話をもらった時すぐに駆け付けたいくらいなのに、
キミに気遣って家の住所すら聞かないままだった自分にイラついて後悔して
一晩どうにかやり過ごして、キミに会いに行った。
けどその時に、キミのすぐ後ろを歩く彼の姿を見つけてしまった」

周りの人たちにどんどん追い抜かれていくスローな私の歩調に合わすように。
そして何か思い立ったように、彼はキミに追いつこうとした。

「それ見た瞬間、奏介は諦めようと思った。
だけどキミが、奏介を見つけて駆けてきてくれた。
その時のキミの姿、奏介は絶対忘れないって言ってた。
めちゃくちゃ驚いて、だけどすっごく嬉しそうに笑ってくれたって」

来る者拒まず、去る者は追わず。
どこかで感情が欠落してた彼が初めて見せた、他人への執着。
「なんとなく生きてきた奏介が、誰かのために生きたいって本気で思ったんだよ。
あのころからは露骨に稜ちゃん一色だったな、奏介のやつ」
沢井さんは笑っていたけれど、私は笑うことができなくて。

だって一言も、そんなこと言わなかった。
サッカーくんのことを気にしてることは、なんとなくわかっていたけれど
それは私のことを心配してくれているせいだとばかり思ってた。
奏さんにとって、私は妹みたいな存在だと、あのころはそう思ってたから。
奏さんの優しさに甘え過ぎて近づきすぎたら嫌われるって、思ってたから。

「それでも稜ちゃんは、奏介への好意を隠そうとしなかっただろ?
あいつはそれが嬉しかったんだよ。
稜ちゃんに会えた日はほんとうざいくらいテンション高くて参った。
それでも自分の気持ちを稜ちゃんに言い出せなかったのは、あいつが臆病すぎたせい。
俺にもそんなこと、一言も言わなかったんだ。
もっと早く言ってくれてたら、きっといろいろ変わってたのにな」
「・・・うん」

奏さんのバカ。
大事なこと、結局全然話してくれないまま、ずるいよ。
奏さんに会いに来るなと言われて、あのまま引き下がっていたら、
本当に何もかも、あの人のすべて、私は何も知らないままだった。

「ほんとにそれな。
でも、ま、キミが頑張ってくれたおかげでようやくまとまってさ、
あいつも幸せそうだったんだけど、俺はずっと気になってたことがあって」
「なにを?」
「あいつ、キミのところに会いに行ったことないだろ。
その、駅の時以降だって、結局稜ちゃんの【領域】に行こうとしなかっただろ?」
「・・・領域・・・・?」
「あいつはそう表現してた。
ほら、元々キミがそういうの嫌がる子だってのもあっただろうけどさ。
でもそこを壊してくれたのは稜ちゃん自身だったじゃん。家族にも奏介のこと話してくれてさ。
キミが奏介のことを本気で心から想ってくれてるって、あいつが一番実感したのってそこだと思うんだ。
だけどあいつはいつまでたってもキミの【領域】に踏み込みにいかなかった」
「でもそれは、奏さんなりの気遣いかと」
先に逝ってしまうことを、最後まで申し訳ないと思ってくれた人だった。。
「それもあるけど、俺には別に理由があるように見えたからさ。問いただしてみた。
そしたら、その彼の話が出て来たってわけ」



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