☆きらきら☆

「だれよりもすきだったサッカーver」掲載中


66 結ぶ刻-とき-3

少しだけ緊張感がほどけてきたころ。
忘れかかっていたそれが現れた。

「なげーな・・・」
「うん・・・」

二人並んで見上げたのは、山の上の住宅地に伸びる階段。
小学生のころは、毎日ここを往復していたわけだけど。
改めてみると、結構な長さ。
そして結構な急こう配。
そういや低学年のころ、転んで膝の皮をガッツリもいだ記憶がある。


そんなことを話すとサッカーくんは、痛そうな顔をした。
そういうところも変わってない。
そんなことを思う。
「確か176段だったかなー、ん?178段?」
180段まではなかったのは確かだけど・・・
それでもこの道のりを自転車担いでっていうのは、
ちょっと考えなしだったな、と今更ながら思う。うっかりしてた。

「よし、高村。お前は先に上がれ。俺は一気に登るから」
「え。一緒に抱えるよ」
「そっちの方があぶねーだろ。いいから先行けよ」
しっしっと手で追い払う仕草をするサッカーくん。
その顔にはいたずらっ子のような笑みが浮かんでる。
「・・・・わかった。でも気を付けてね?無茶はなしね?」
「わあってるって」

いち、に、さん・・・・。
心の中で段数を数えながら、階段を上がっていく。
中盤くらいでチラリと下を振り返ると、ちょうどサッカーくんが自転車を担ぎ上げるところだった。
あんな大きなものを軽々持ち上げちゃえるんだな、男の子って。
なんて思っていたら、サッカーくんはそのまま勢いよく駆け上がってくる。
うっそーーっ?
どんだけ力あんの???
すごすぎるっ!!

結局あと10数段残したところでサッカーくんは追いついてきた。
そして、自転車を担いだまま、隣に並ぶ。
「何段目?」
「えーと165段」
「よしゃ」
「?」
そこからサッカーくんは私と同じ歩調で階段を上る。
「先に行ってて?しんどいでしょ?」
「全然、余裕」
笑ってるサッカーくん。
3年前、当たり前に見てた彼の笑顔。
「・・・・」
「おい、どこ行くんだよ?」

「えっ?あっ」
気が付けば階段は終わって、目の前には住宅地が広がっていた。
夏の夕暮れ時。
荷台に腰を掛けた時、サッカーくんと歩いてきた道が眼下に広がっていて、
それは小学生の時に見た景色とずいぶん違って見えたのは、
夕焼け色のせいだけじゃない。
今日が何の日だったのかを不意に思い出し、急激に切なさがこみあげてきた。

「高村―。おまえんち、こっちからだとよくわかんねー。ナビしてくれ」
「う、うん、わかったっ!」
浮かんだ涙を振り切って返事をする。


家の前に着いたときには、もうあたりは青と藍の間の色になっていた。
珍しく家族の車も揃っていて、門燈も点いていた。
その門燈の明かり以外届かない薄暗い門の前で、サッカーくんに向き合う。
「送ってくれてありがとう」
「いや・・・結局遅くなったな、悪い」
「ううん。・・・平気。ほんとにご」
ごめんね、という言葉は玄関が開く音でかき消された。
玄関の明るい光の中に見えたのは、兄貴のシルエット。
けれどそれはすぐに玄関の中に消えて、すぐにまた暗さが戻ってくる。
サッカーくんの表情がよく見えない。
「・・・・・・大丈夫?」
「え?うん、大丈夫だよ?叱られるほど、もう子供じゃないし」
今日がどういう日か、家族は知ってる。
帰宅が遅くなるかもしれないことも言ってある。
多分、心配してくれてるだけだと思う。
「・・・・そんならいい、じゃ俺帰るし」
サッカーくんがこちらに自転車のハンドルを手渡してくる。
それを受け取りかけて、はっと気が付いた。
「や、待って!!もう遅いし、この自転車乗って帰って!!」
「は?・・・いいよ別に平気だし」
「でも心配だもん。今から歩いて帰ったらすごく時間遅くなるし、
危ないのはサッカーくんだっておんなじだよ?
明日駅に止めてくれたらいいし!」
「・・・・・・・・・・わかった。んじゃ、遠慮なく借りることにする」
「うん。良かった」
ハンドルから手を放す。
けどそれはサッカーくんの手に渡しきれなくて自転車はバランスを崩した。
カゴに乗っけたままだった彼のカバンと私のカバンが飛び出す。
「わわわ、ごめんっ」
「自転車持っとって。俺が拾うから」
「うう、ごめんー」
私の荷物を拾うサッカーくんの手が一瞬止まったのを、私はその時、全然気が付かなかった。

「ん」
「ありがと、ごめんね」
「・・・・」
「・・・・サッカーくん?」
サッカーくんの視線を感じて、彼を見上げると、一瞬だけ目が合ってすぐに逸らされてしまった。
「・・・・家、早く入れ。それ見てから帰るから」
「・・・・うん。わかった。・・・・遅くまでごめんね。気を付けて帰ってね?」
「ああ」

玄関のドアを開けて振り返って見た彼の顔がひどく苦いものを噛んだような、そんなように見えてはっとする。
なんで?と思う間もなく、彼は笑顔を浮かべた。
「また、明日な」
「・・・うんっ」
バイバイと手を振ると、彼の笑顔は少し柔らかくなった気がした。
「また明日ね」
それに少しほっとしてもう一度手を振りながら、ドアを閉めた。



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