☆きらきら☆

あかつき涼の小説blog


STAY 〜冬〜 69


亮太はいくらかシャンとしたらしく、院内に入ると慣れた様子でエレベーターに乗り込み、とある病棟の詰所に凛の病室を教えてもらっている。
たかが小6でその態度は少しも物怖じしない。可愛くないくらいに。
でもそれは、それだけこいつが苦労してきたってことなんだろう。
さっきはずいぶんと厳しいことを言ったけれど、やっぱり可哀そうだと思う気持ちはある。
まあ、オレと違ってずいぶんまっすぐなヤツだから、道を踏み外すようなことはなさそうだけど。
その辺はやっぱり姉弟だ。凛と似てる。
だけどもしかすると、亮太の方が凛よりも繊細なのかもしれねえな。
まともに口をきいたのは初めてだったけれど、そんな気がした。



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STAY 〜冬〜 68


「・・・・・・オレさ、昨日の夜、家飛び出して・・・・・。だから、ホントは、まだねーちゃんに会ってなくて・・・・・。ねーちゃんが無事だってことも、伯父さんから聞かされただけで・・・・・・」
この時なんでオレはこんなことをこいつに話そうと思ったのか、よくわからなかった。
だけど多分、これ以上自分の中に抱え込むのがキツくなってたんだと思う。

あいつは、ああそうか、と答えただけだった。
そんなこともうとっくにわかってたっていう感じ。
なんでも見透かされてるみたいなその態度は、今は逆にほっとできた。
自分で言い出しときながら、あれこれと詮索されたくはなかった。



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STAY 〜冬〜 67


ねーちゃんの手術のこと。
それに合わせて、みんなでフランスに引っ越すこと。
その話を聞いて、ねーちゃんが泣いたこと。

オレは、あいつに余計な突っ込みを入れられないように、きちんと順序立てて話した。
最大限の努力ってものをしたつもりだった。
だけどあいつは、その間、大きく表情を変えることはなかった。
オレ、ちゃんとわかるように話してるよな?って不安になるくらい動じなかった。

ねーちゃん、いなくなるんだぞ?
平気なのか、こいつ。
ねーちゃんが行きたくないって泣いた一番の理由は、おまえなんじゃないの?



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STAY 〜冬〜 66


閉じられっぱなしの雨戸を見ないようにして急いで家に入る。
リビングのドアは開いていて廊下からも散らかった部屋が見えたけれど、そこから目を逸らして2階に駆け上がった。
スポーツバッグに、無造作に着替えを放り込む。
学校の荷物も、無理矢理詰め込んで。
クラブのバッグに手を伸ばす。
いつもの習慣。当たり前のようにバスケットボールを手にしていた。
そして思う。
父さんのことを自分勝手だなんてよくも言えたもんだなって。
オレはどうなんだよ。



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STAY 〜冬〜 65

オレは、店の厨房のはじっこに置いてある椅子に膝を抱えるようにして座っていた。
ちっこい頃からここは、気持ちがくじけてる時のオレの定位置。
ねーちゃんが入院してる時は、いつもここに預けられていた。

父さんにこっぴどく叱られた時や、健兄や和兄とケンカして負けた時とか。
それに、寂しくて仕方ない時とか。

ここにいると、気持ちが落ち着くんだ。
パンの焼ける匂いや、人が忙しなく動く気配。
聞こえてくる音に一切の無駄がなくて。
夏は少し蒸し暑くて、冬はホコホコする。
安心できる場所。



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SATY 〜冬〜 64


申し訳なさそうに私を見守っているお父さんとお母さんの姿。
その顔は、たった一晩でひどくやつれてしまったように見える。
頭がひどくぼんやりする。少し吐き気もする。これはきっと安定剤のせい。
いつも点滴をする左腕には包帯が巻かれてて、その代わり右腕で点滴を受けていた。
ああ、そうだ。
昨日の夜、発作を起こした私は薬を飲まなかった。救急隊の人が刺した点滴の針も引っこ抜いた。
消えてく意識の中で聞いた音や声。
耳障りなほどに騒がしかった。
私のことなんてもう放っておいてくれたらいいのに。
どうして、またこうして、ここにいるんだろう。



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STAY 〜冬〜 63


真っ暗な闇が降りてくる。
それが怖くて、まだ幼い私は泣いていた。
闇の中で私は一人ぼっち。
自分がそこにいるのかどうかも分からなくなる暗闇の深さに、怯えるしかできなくて。
そのうちきっと闇の中に飲みこまれてしまうんだって思ってた。


ああ、またこの夢を見てるんだなって、眠ってるはずの頭の中で考える。
小さい頃、よく見た夢。
また見てるんだ。私・・・・。



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